鍼師や灸師の国家資格を保有していると、鍼灸師として独立ができます。
国家資格を保有している人だけが開業できる独占業務です。
仕事に追われる今の時代、体をリラックスさせる鍼灸院の需要は高まっています。
今回は高まる需要に応えるために、鍼灸師として独立する方法やポイントについてご説明します。
鍼灸師での独立に向けた基本知識
これから鍼灸師として独立するならば、基本知識を持たなければなりません。
まずは独立前に最低限押さえておくべき知識をご説明します。
鍼灸師の仕事内容
鍼灸師は鍼や灸を利用して体に刺激を与え、治癒力を高める治療を指します。
人間は自然治癒力を持っているため、刺激を与えることでこれを引き出してあげるのです。
どこを刺激するかによって治癒力の高まり方が異なるため、患者の状況を踏まえて適切な施術をしなければなりません。
状況に応じた高い施術能力が求められるため、鍼灸師になるには国家資格が必要です。
独学で知識を身につけたとしても、職業にするためには鍼師や灸師の資格を保有しなければなりません。
鍼灸師には受験資格がある
鍼灸師として独立するためには国家資格が必須です。
すでに保有していれば独立に向けた行動が取れますが、鍼灸師として働くための資格がなければ取得から始めることになります。
ただ、鍼灸師は誰でも受験できるのではなく「鍼灸系の専門学校を卒業」「鍼灸学科がある4年制大学または3年制短大を卒業」などの受験条件があります。
これから資格を取得して独立したいと考えるならば、受験資格を満たしているのか確認が必要です。
受験資格がないならば、独立に向けて専門学校に通うなどすることから始まります。
鍼灸師で独立するための事前準備
鍼灸師として独立するならば事前準備が重要です。
以下では具体的に準備しておきたいものについてご説明します。
独立準備1:基準を満たす物件
鍼灸院を開業する場合、構造設備基準を満たす必要があります。
建物や設備に関する基準があるため、必ず確認して適切な物件を準備するようにしましょう。
具体的な基準は法律や条例によって定められています。
そのため、鍼灸師として独立する自治体で詳細について確認しなければなりません。
詳細は異なりますが、例えば以下のような基準が設けられています。
- 6.6平方メートル以上の専用の施術室を有すること。
- 3.3平方メートル以上の待合室を有すること。
- 施術所は室面積の1/7以上に相当する部分を外気に開放できること。
※ただし、これに代わるべき適当な換気装置があるときはこの限りでない。
- 施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること。
- 施術室は、住居・店舗等と構造上独立していること。
- 施術室と待合室の区画は、固定壁で完全に仕切られていること。
- ベッドを2台以上設置する場合には、各々カーテン等で仕切り、患者のプライバシーに配慮すること。
自治体ごとにこのような基準が設けられているため、その基準を満たせるような物件探しをしましょう。
独立準備2:室内の備品
鍼灸院には多くの備品が必要です。それらについて独立前から準備を始めましょう。
調達に時間を要するものもあるため、スケジュールに余裕をもって計画的な準備を心がけます。
必要となる設備や備品は独立の規模などによって異なります。
数量の差はありますが、概ね以下の備品が必要です。
- 消毒・手洗い場など衛生面の備品
- 施術台やまくらなど利用者向けの備品
- 回転椅子など施術者向けの備品
- 椅子や傘立てなど待合室の備品
- スリッパなどの履物
- 電話や時計など電化製品
- 各種ゴミ箱
- ロッカー
すぐに購入できるものもあれば施術台のように時間を要するものもあります。
購入して自分で持って帰れるものもあれば配送してもらうものもあるため、優先順位を付けて上達に時間を要するものから準備を進めていきましょう。
独立準備3:広告関連
独立してもお客様が来なければ鍼灸師としても活躍できなくなります。
そのため、独立前から広告活動には力を入れ、できるだけ早くお客様を見つけられるようにしましょう。
最初に準備してもらいたいのは、チラシなどの印刷です。
印刷物はポスティングなどで簡単に新しい鍼灸院をアピールできます。
最近は印刷物の相場が安くなっているため、先を見越してまとまった枚数を注文しておくと良いでしょう。
また、鍼灸院の建物が完成すれば、独立する前でも看板を取り付けたり窓に広告を貼ったりしておきましょう。
通りかかる人に「新しく鍼灸院ができる」と認識してもらえれば、それがお客様の確保につながる可能性があります。
他にも、鍼灸院も独自のWebサイトを持つべき時代です。
広告活動の一環としてWebサイトを用意しておき、料金プランの紹介や予約の受付ができるようにしておくのが理想的です。
鍼灸師で独立する際の流れ
鍼灸師として独立するための流れは概ね以下のとおりです。
- 個人か法人かの決定
- 物件の準備
- 保健所への事前相談
- 鍼灸院の開業手続き
- 保健所からの検査
- 副本交付
- 営業開始
具体的にどのような流れで独立していくのかご説明します。
独立の流れ1:個人か法人かの決定
最初に事業を個人で展開するか法人で展開するかを決めます。
それぞれメリットデメリットがあるため、それらを踏まえて選択しましょう。
まず、個人の場合は個人事業主として鍼灸師の事業を展開します。
税務署に個人事業主の開業届を提出すれば、手数料もなく簡単に手続きが完了します。
ただ、個人だと信用力が低いというデメリットがあります。
続いて、法人の場合は株式会社や合同会社として鍼灸師の事業を展開します。
法務局で法人登記の手続きをする必要がありお金も時間もかかりますが、社会的信用力が高まります。
将来的に規模の拡大をしたい場合も、法人を選択しておいた方が良いでしょう。
ただ、法人設立の手続きは複雑で素人には対応が難しいものです。
そのため、鍼灸師で開業するために法人登記したいならば、経営サポートプラスアルファにご相談ください。
手数料無料かつ24時間、プロが会社設立のサポートを受付しています。
独立の流れ2:物件の準備
上記でご説明した基準を満たす物件を探し出しましょう。
条件を満たしていなければ鍼灸師として独立できなくなるため、必ず条件を確認し適切な物件を契約しなければなりません。
物件を契約する際は、居抜き物件を利用するかどうかを検討すべきです。
居抜き物件ならば基準を満たしている可能性が高く、鍼灸師として独立しやすいでしょう。
基準を満たせるように開業するのは負担がかかるため、こだわりがなければ居抜き物件を探してみるべきです。
なお、物件の外内装に改修が必要な場合は、できるだけ早く対応しておきましょう。
ここに時間を要してしまうと、独立までのスケジュールに影響を与えてしまいます。
独立の流れ3:保健所への事前相談
鍼灸師として独立する地域が決まれば、管轄する自治体の保健所へ事前相談をします。
鍼灸院の開業は自治体ごとに個別のルールがあるため、それについて確認するのです。
また、どのような書類が必要となるのかも事前に確認しておきます。
なお、事前相談で問題が発覚した場合は、すぐに改善する必要があります。
例えば鍼灸院の名称が医療法や医師法に抵触すると申請を受け付けてもらえません。
思わぬところに問題が問題が潜んでいる可能性があるため、細かく確認しておくことをおすすめします。
独立の流れ4:鍼灸院の開業手続き
事前相談で特に問題の指摘がなければ、鍼灸院の開業に向けて手続きをしましょう。
鍼灸師として独立するためにはいくつかの書類を作成する必要があるため、丁寧に作成すべきです。
まず、必ず作成が必要となるのは「施術所開業届」です。
自治体の保健所に対して提出するもので、開設してから10日以内の提出が求められます。
物件の改装などが完了し営業できる状態になれば、すぐに提出しましょう。
また、開業届を提出するにあたって以下の添付書類も必要です。
- 施術所の平面図
- 本人確認書類
- (法人のみ)登記事項証明書
- はり師・きゅう師の免許証の原本
添付書類については自治体によって必要なものが異なります。
保健所で必要な物を確認しておき、スムーズな申請ができるように準備しておきましょう。
独立の流れ5:保健所からの検査
提出した書類に問題がなければ保健所の担当者が受理してくれます。
その後、書類の内容を精査して内容に問題がないか確認されます。
特に問題がない場合、書類を提出してから2週間ほどで保健所の担当者が現地検査のために訪れます。
検査の内容は「書類の内容と実際の状態に相違がないか」です。
基準を満たした物件を用意していれば、特に指摘されることはないでしょう。
なお、検査は様々な観点から実施されます。
基準を満たしていることはもちろん、室内が清潔に保たれているかなども重要です。
検査に来た際に汚れていると指摘される可能性があるため、特に注意しなければなりません。
独立の流れ6:副本交付
検査で特に問題が指摘されなければ、鍼灸院の開業が認められます。
鍼灸師として独立するまでもうすぐです。
検査が完了すればすぐに独立できるのではなく、副本の交付を待たなければなりません。
副本は内容を写した文書のことを指していて、ここでは開業の許可についての文書を受け取ることと認識しておいて良いでしょう。
こちらが交付されて初めて鍼灸師として独立し営業ができるようになります。
副本が交付されるまで、早くても申請してから1ヶ月は必要となります。
指摘事項があるとこれ以上の期間を要するため、鍼灸師の独立を考えている場合は、スケジュールに余裕を持つことを心がけておきましょう。
独立の流れ7:営業開始
問題なく全ての手続きが完了すれば鍼灸師として独立できています。
いつでも営業を開始できるため、準備ができ次第、営業を開始させましょう。
なお、独立できたということはスタート地点に立ったということです。
独立したことを後悔しないように精一杯頑張っていきましょう。
まとめ
鍼灸師が開業する方法についてご説明しました。
開業には資格が必要であったり届出が必要であったりするため、どのような段取りで開業するのか必ず理解しておきましょう。
また、開業する際は個人と法人を選択しなければなりません。
個人は開業のハードルが低い、法人は社会的信用力が高いなどそれぞれに特徴があるため、それらを踏まえてどちらが適しているか考えるべきです。
なお、法人を選択すると法人登記で専門的な手続きが必要です。
そのため、この手続きに不安がある場合は、経営サポートプラスアルファにご相談ください。
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