会社設立時に大切なポイントは、資本金です。
最近は若い人たちが積極的に会社設立する傾向が顕著であるため、資本金はあまり用意出来ないという方々もいらっしゃることでしょう。
そもそも会社設立のうえで資本金はどのような意味を持つのでしょうか。
まずはそこから明確にしましょう。
資本金の金額設定は、以前と比較してフレキシブルに対応することができるようになりましたが、実際には資本金は多くても少なすぎても問題が起こることがありますので最初に慎重に判断する必要があります。
今回は、資本金とはなにか 資本金が少ないメリット・デメリットなどを解説したいと思います。
是非、一読してください。
資本金とはなにか
個人事業をスタートされる方々や中小企業の経営者が資本金の意味を理解できていないということは実際にあることです。資本金の知識がなくても会社を設立することは十分可能です。
しかし資本金とは、会社設立の基礎となりうるものです。資本金のことがわからずに行き当たりばったりの会社を設立しても明るい未来はありません。
資本金とは、事業運営に用いることができるお金です。起業したばかりというケースでは、なかなか他者に依存し出資を集めることは困難なので自身のお金を会社に出資することが基本です。
資本金が少ないデメリットについて
資本金は1円からでもスタートすることができるように法律が改正(2006年最低資本金制度が撤廃)されました。現在起業を検討している方々は、そのことによって起業の敷居の相当低くなったということができます。
現在、少ない資本金でも起業は可能かもしれませんが、今後存続させることについて真剣に考えていかなければなりません。「起業スタート」と「企業存続」は別問題です。
資本金が少ないことでもたらさせるデメリットには、以下のような問題があります。
- 融資してもらうことができない
- 会社内取引に影響してしまう
- 事業運営経費に充てられない
- 必要な営業許可を取得できない
- 資本金が少ないと会社がもたない
- 優秀な人材が入社してくれない
それでは順番に説明します。
1.融資してもらうことができない
資本金は、会社がどの程度体力を持っているのか示すバロメータです。
世間的には「資本金の額が多いからこの会社のことを信用することができる」という見られ方をしています。
具体的に言えば、これから金融機関に口座を開設しようと思ったり融資を申込みしたりしても資本金が多いと有利に事を進行させられます。
逆に資本金の額によっては、融資して欲しいと思うものの融資を受けることができないこともあるということです。
例えば「日本政策金融公庫」から融資を受けたいと思ったら、融資してほしいと思っている額の最低10分の1以上の資本金が必要とされています。
それぞれ融資の商品に対して条件であったり限度額に対して違いはありますが、基本は資本金の額が多いほど、多額の融資を受けることができる傾向にあります。
融資を受けないというのなら資本金の額は少なくても良いですが、経営状況はめまぐるしく変化していくものです。
会社設立で融資をスムーズにおこなうためには、ある程度の資本金額は必要になります。
2.会社外取引に影響してしまう
資本金は融資する金融機関だけでなく、取引をしている会社も確認をしています。
会社は相対する会社と取引をして利益を生み出すことになります。
取引している最中に会社が倒産してしまったという悲劇に遭遇してしまうこともゼロではありません。そのため会社は、取引リスクが高い会社をあらかじめ見抜く目を持つ必要があります。
すべての会社では新しい取引をする以前に、取引対象の会社を厳しく審査をしていることでしょう。その時のチェックポイントは、やはり「資本金」ということになります。
資本金の額が少ないことで、体力のない会社だという見られ方をしてそ「取引はやめておこう」と断念することもあります。
3.事業運営経費に充てられない
資本金は使用してはいけないお金であるという認識が多いですが、資本金は使うためのお金です。
資本金は事業を運営するための経費の支払いに充てることができます。
経営の元手の資金が資本金なのです。
資本金が豊富にあれば物品を購入したり、従業員の給料などいろいろな使い方ができます。資本金が少なすぎるとすぐにお金は底をついてしまうでしょう。
資本金は1円でも大丈夫になったのは事実ですが、1円で実際に会社設立が出来るのかといえば事実は別問題です。
株式会社を設立しようと思えば、登録免許税や定款認証費という支払いも出てきます。
会社設立を考える方々は、あらかじめ資本金にプラスして数十万程度の資金を用意しておく意識が必要です。
4.必要な営業許可を取得できない
業種のなかには、ある一定の資本金がないと起業できないこともあります。
一般建設業を設立しようと思えば、最低500万円の資本金を用意しなければなりません。
建設業許可を受けるためには、財産的基礎また金銭的信用を有するという条件設定があります。
一般建設業許可であれば資本金は500万円以上であり、特定建設業許可の場合は資本金2,000万円以上が必要、また自己資本4,000万円以上といった厳しい要件をクリアする必要があります。
次に第一種旅行業を設立しようと思えば、3,000万円を用意する必要があります。
一般労働者派遣事業の場合は、1事業所設立にあたり2,000万円の資本金が必要です。
このように業種によっては、高額の資本金をあらかじめ用意しなければならないことがありますのでこのあたりのことも頭に置いておくべきです。
5.資本金が少ないと会社がもたない
資本金を300万円程度用意しているケースが多いですが、 資本金はいわば会社開業のための資金であり運用資金として確保しておかなければならないお金です。
会社設立には初期費用が必要であり、プラスして軌道をうまくのせるための運用資金の確保が必要不可欠です。
オフィス契約や机、イス、パソコンの購入など仕事が出来るための環境を整える必要があります。
オフィスは自宅というのなら初期費用がかからないで気楽に事業をスタートすることができますが、統計では12万円以上の費用はかかるといわれています。
会社設立する方々は、このようなお金の流れもあらかじめ理解しておく必要があります。
出資の目算を間違えてしまうと資金不足がおきて早々と納品できないケースが発生します。
売り上げはすぐに出ることが理想ですが、売り上げが出ない状態でも3ヶ月程度は事業を存続することができる資本金の額を確保しておくとより安心度をアップさせることができるでしょう。
6.優秀な人材が入社してくれない
会社設立をして、ビジネスを急成長させたいと思えば有能なパートナーが必要だと思うでしょう。
しかし募集案件を探している人たちも会社の資本金の額が少ないと不安感を感じてしまうデメリットがあります。
求人者は新しい企業に意欲的に参加して企業を成長させたいという願望は持っているのかもしれませんが「売り上げが充分でない期間は給料を支払ってもらうことができないかも」という不安を抱えてしまい、存分に自己の能力も発揮出来なくなってしまうでしょう。
資本金が少ないメリットもある
資本金は開業資金や運転資金として使用されるものです。返済しなければならないお金でもありません。
そのような意味では、資本金=会社の安定と言うことができます。
資本金=会社の安定であれば資本金の額は増やそうという気持ちも起こるのかもしれませんが、資本金の額を多くしてしまうことで税制優遇を受けることができなくなり税金を多く支払わなければならない可能性があります。
もしも資本金が1,000万円未満であれば、2期目までは消費税納付は免除の優遇を受けることができます。
法人住民税では、事務所などを有していることをベースにし、必ず払わなければならない「均等割」がありますが、資本金が1,000万円以下の場合は均等割で支払いする税金の額を少なくすることができます。
さらに資本金の額3,000万円以下という場合、設備をいろいろ購入した場合、税の減免など優遇措置を受けることも可能です。
このように税金面のことを考えると、会社設立時1,000万円未満に資本金をおさえることで税額が少なくできるメリットがあると考えることができます。
どの程度の資本金を用意するといいのか妥当な額を判断する決め手
資本金は少なすぎると信頼を得にくくなります。しかし多すぎても税制優遇など受けることができなくなってしまうデメリット要素も抱えてしまうことになります。
業種によっては用意しなければならない資本金額は変わりますが、全体を見れば300万円前後の資本金を用意されるケースが一番多いです。
税制優遇のことも考えると、最初の段階の理想ラインは 300万円前後~1,000万円未満あたりです。
もちろんそれぞれの会社設立には違いがあります。
EC事業をスタートしようと思えば、もっと少なくていいでしょうし、製造業など設備投資が多いとさらにお金が必要ということも起こります。
利益が全然もたらされない状態でも数ヶ月程度はお金のやりくりは問題なしの状態、急変の事態が起きてそれに対応することができるゆとりが存在しているかといった様々な視点から考えて資本金の額を決定する必要があります。
資本金額の設定で注意しなければならないポイント
前述でも説明した通り、事業によっては許認可の取得が必要なことがあります。
建設業の許可の場合、純資産が500万円といった要件があります。建設業をスタートしようと思えば当然要件を満たすことができる額を用意しなければなりません。
あらかじめ設定した資本金の額によって負担が嵩んでしまうこともあり、事業に弊害が及んでしまうこともあります。
資本金の額が少ないと節税面ではメリットがありますが、一方では社会的信用を失ってしまうかもしれないということを判断して額を決めることが大切です。
実際に「1円起業」は可能なのか
1円起業とは、たった1円の資本金で会社を設立することを言います。
会社法が改正される以前は、有限会社の場合300万円、株式会社の場合1,000万円を用意しなければスタートできませんでした。
それが1円でOKとなり相当ハードルは低くなりましたが、同時に1円起業という言葉だけ勝手に一人歩きしてしまったことはないでしょうか。
そもそも法律では1円でOKという取り決めをしたものの、1円で起業は出来るものでしょうか。
結論を言えば、資本金の額が例え1円であっても会社設立自体は1円で可能な訳ではありません。 収入印紙であったり、登記費用と言った費用も嵩むことになります。
最低ラインで、合同会社だったら6万円、株式会社だったら21万円程度の資金はあらかじめ調達する必要があります。
1円起業では融資受けるのは難しい…
「会社設立しました」と言うとき、融資は自己資金が大事な要件となっています。
また融資を受けることができる額は、資本金の二倍という一般的常識ものあります。
もし1円起業でスタートした方々が融資を受けることができたとしても、「二円」しか借りることができないということになります。
若い人たちが会社設立を目指しているのなら、資本金の平均値300万円は厳しいとしても、せめて100万円程度は資本金とする必要があります。
1円起業ではどこから運転資金を抽出すればいいのか……
起業してすぐにキャッシュが手元に入る訳ではありません。事業をスタートして、三ヶ月程度は辛抱しなければならない時期です。
その期間耐えることができるだけの資本金を本来用意しておかなければならないです。
そのようなことを考えても、1円起業はほとんど現実味に乏しいということができます。
資本金が少ないのなら後から増資すればいい?
資本金をあらかじめ少なく設定し、必要なら後から増資すればいいという考えをお持ちの方もいます。
はじめに規模の小さい会社でも、資本金を増資して規模を拡大することができます。
増資によって、経営に安定感をもたらすことができます。取引や融資に対してもメリットが生まれるでしょう。
しかし増資によって株主は1株の勝ちが減ってしまい、デメリットが生じることがあります。
増資のために新しく出資を受ける必要がありますが、今までの株主以外から出資を受けることもあります。
そのとき意識しなければならないのは、持株割合についてです。
持株割合を意識しないで出資してしまった場合、第三者が筆頭株主になってしまうという事態に陥る可能性があります。
そのような事態を避けるためにも増資した後のそれぞれ株主の持株割合についてはあらかじめ計算しておく必要があります。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は、会社設立時考えるべき資本金が少ないメリット・デメリットについて解説をしました。
会社設立時の資本金の意味も正しく理解することができたでしょうか。
まずは資本金の意味を正しくとらえることが大事です。
資本金が少ないことでのメリットもありますが、デメリットのほうが大きいと考えるべきです。
資本金の額が少ないと、金融機関から融資をなかなか受けることができないので、金融機関からは信用のない会社だと判断されてしまいます。
取引しようと思うものの他の企業からも信用度はかなり薄くなってしまうため、資本金が少ないとそれだけ最初の段階で躓いてしまうことになります。
節税面ではメリットがあるとしても社会的信用を失ってしまうかもしれないというバランスを見極め妥当な額を決めることが大事です。