株式会社を設立する際には「資本金」が必要になります。
かつては1000万円必要だった株式会社の最低資本金も、現在は1円で、会社設立ができるようになりました。
今回は1円で株式会社をどのように設立するのか、1円株式会社の作り方を解説します。
1円で会社を設立するのは、メリットだけではないことにも注意してください。
1円会社のメリット、デメリットについてもお話しします。
1円株式会社はどのくらいあるのか?
2006年の新会社法制定によって、それまで1000万円の最低資本金が必要だった株式会社も、資本金1円での会社設立が可能になりました。
最低資本金制度が廃止され、実質、資本金不要で会社設立ができるようになりましたが、実際の「1円株式会社」はどのくらいあるのでしょうか?
2016年の新規株式会社設立した際の資本金について、政府資料があります。
資本金額 |
2016年に設立登記した株式会社 |
|
|
設立件数 |
割合 |
100万円未満 |
14,843 |
16.42% |
100万円以上 |
31,265 |
34.58% |
300万円以上 |
16,652 |
18.42% |
500万円以上 |
22,111 |
24.46% |
1000万円以上 |
3,631 |
4.02% |
2000万円以上 |
1,204 |
1.33% |
5000万円以上 |
465 |
0.51% |
1億円以上 |
218 |
0.24% |
10億円以上 |
14 |
0.02% |
50億円以上 |
0 |
0% |
100億円以上 |
2 |
0.002% |
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合計 |
90,405 |
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かつて、株式会社設立には資本金1000万円必要でしたが、現在その1000万円以上の資本金にてて開業する会社は10%にも満たないのです。
資本金100万円未満で新規開業する株式会社も15%超あります。
データはないものの、日々多くの会社設立支援をしている私たち経営サポートプラスアルファの感覚としては、今回紹介する資本金が「1円」の会社は稀であり、後述のデメリットが大きいことからおすすめはしていません。
しかし、法制度的には資本金1円での作り方があるということを知っておいてください。
1円で株式会社の作り方
資本金1円での会社の作り方も、基本的に資本金がそれより多いケース(300万円でも5000万円でも)と同じです。
株式会社設立の流れは以下になります。
それぞれ順を追って解説します。
株式会社設立の流れ
- ステップ1
商号(社名)や事業目的、資本金、社員(役員)等を決める - ステップ2
定款を作成する - ステップ3
定款を公証役場で認証する(合同会社は不要) - ステップ4
社印を作成する - ステップ5
資本金を振り込む - ステップ6
法務局へ行き会社設立登記をする - ステップ7
設立登記完了後社会保険や年金の手続きをする(これで株式会社設立の手続き完了)
法人の名称(商号)や事業目的、資本金等の決定
まず、株式会社設立のためには「商号」(会社名)を決める必要があります。
「株式会社○○デザイン「△△商事株式会社」などの会社名(商号)です。
「株式会社」は商号の前(前株「株式会社~」)でも後(後株「~株式会社」)でもOKです。
設立する会社でどのような事業を行うのか、事業内容を決めます。
これは定款に記載することになるので重要です。
将来的に考えてるが開業時には行わない事業についても書いてOKです。
雑貨屋を開業するが、将来的にはカフェを併設したい場合「雑貨小売り」に加えて「飲食店」を事業内容に加えてもいいのです。
株式会社の本店住所をどこに置くのかを決めます。
自宅開業の場合は自宅住所を、家族の物件ならばその住所、レンタルオフィスの場合はその住所を本店とします。
事業が回りはじめ、新しく事務所を設置できるくらい稼げれば、その時、後日、そちらに移転登記をすればOKです。
暫定的でもよいので本店所在地を決めます。
通常はこの段階で資本金額を決め、出資者を決めますが、1円開業なので、資本金は1円、出資者は自分(というか誰でも)になります。
さらに役員の選任も行います。
1人会社の場合、自分が代表取締役になります。
規模が大きい場合、平の取締役を選任しますが、そうした会社はそもそも資本金1円では回らないでしょう。
定款を作成する
会社の「憲法」とも呼ばれる定款を作成します。
ここが大きなステップで何よりも重要になります。
定款には「絶対的記載事項」と呼ばれる必須事項を記載します。
以下の項目になります。
- 商号(会社名)
- 目的(事業の目的)
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金の金額)
- 本店所在地
- 発起人の氏名及び住所
- 発行可能株式総数
定款にこれらの記載がないと、不備でになり、法務局で受理されません。
事前に必ずチェックをお願いします。
定款の認証
株式会社の設立にあたり、定款を公証役場で認証されることが必要になります。
定款認証は合同会社設立の際は不要ですが、株式会社設立には必須となります。
資本金の振り込み
定款認証後、発起人個人名義の銀行口座に資本金の振り込みを行います。
1円会社の資本金振込は通帳に「1円」と印字されなくても問題ありません。
1円以上が振り込まれている必要があります。
しかし単純に金額だけでなく、発起人の個人口座に出資者からの振込であることがわかれば有効です。
1円会社の場合、発起人=出資者のケースが多いので、自分の個人口座に、自分名義で振り込みをします。
口座への入金ではなく、第三者として自分の口座に振り込み、通帳に自分の名前が振込人として記載されることが必要です。
株式会社設立登記を行う
定款(認証済み)、払込証明書(資本金1円)などの必要書類が揃ったら、法務局へ行き、株式会社設立の登記申請を行います。
株式会社設立の登記は、法務局の書類受理(審査に通過)をもって完了します。
1週間~2週間ほどで、登記簿が取れるようになり、その時点で株式会社設立登記が完了します。
1円会社の作り方は、通常の株式会社設立と同じで、発起人の個人名義に振込するお金が「1円」になるだけです。
そのほかの違いはありません。
1円は資本金だけの話!会社設立費用はほかにもかかる
1円で会社設立できるというのは、「1円は資本金だけで資本金以外の費用はかかる」という意味です。株式会社設立のためには、ほかにも下記の費用が発生します。
株式会社設立に必要な費用 |
|
定款印紙代 |
・紙の定款:4万円 |
定款認証代
|
①「資本金の額等」が100万円未満の場合、「3万円」 |
謄本代 |
2,000円(250円×8枚) |
登録免許税 |
最低15万円 |
資本金 |
最低1円(※ここが1円) |
合計 |
18万2千円+資本金 |
会社設立にかかる費用(その他費用) |
|
社印作成費用 |
約2万円 |
発起人の印鑑証明書 |
1人につき約300円 |
資本金を除いても、株式会社設立には202,000円超のお金がかかります。
開業費用がかからない個人事業主とは違うので注意してください。
<関連記事>
1円株式会社のメリットとデメリット
「1円会社」には、メリットとデメリットがあります。
1円株式会社のメリット
1円株式会社のメリットは以下の2つです。
- 誰でもとにかく株式会社設立ができる
- 初期費用を大幅に抑えることができる
株式会社設立にあたりかつては1000万円必要だった資本金が1円(実質なし)ででき、開業費用は上記の20万円超のみです。
「とにかく株式会社を設立したい!」という人にとっては、資本金1円で株式会社設立ができるということは願ってもない環境なのかもしれません。
1円株式会社のデメリット
一方、1円株式会社にはデメリットもあります。
- 自己資本が非常に少ない
- 債務超過になりやすい
- 法人の信用度が低くなり借入等に不利になる(資本金1円の会社はお金がない、ダミーなどと思われる)
- 事業の許可申請が取れない(基準資産額要件がある旅行業や人材派遣、人材紹介業など)
資本金は貸借対照表の「資本」(純資産)の部に記載される「自己資本」です。
資本金1円ということは、自己資本が非常に少なく、会社経営を行う際、デメリットが大きくなります。
資本金1円の会社にお金を貸す金融機関も少なく、資金調達に苦労します。
運転資金などの困った場合は。代表者の自己資金(預金など)で補填しなければなりません。
1円会社は資金力がない、故に社会的信用もない。と周囲から判断されやすいことになります。
そして、「ダミー会社」などネガティブな事情があるのでは?と思うかもしれません。
資本金1円+法定費用で会社を乱立させ、営業実態のない会社を作ることも理論上可能です。
取引先やお客様にとって、資本金1円というのは、ポジティブな材料になりえないことに注意してください。
旅行業や人材関連業種の場合、開業にあたり基準資産額があり、これは借入によってまかなうことができない資産要件です。
自己資金がない人は、こうした業種の開業が難しくなります。
1円で株式会社設立するメリット、デメリットまとめ表
以上を表にまとめました。
1円で株式会社設立するメリット | 1円で株式会社設立するデメリット |
---|---|
とにかく株式会社設立ができる | 自己資本が実質ない |
開業初期費用が安い(約20万円) | 債務超過に陥りやすい |
法人評価が低くなり、金融機関からの借入が難しい | |
ダミー会社と誤解されやすい | |
基準資産額要件のある業種が開業しにくい |
結局、資本金1円で株式会社設立は可能なもののデメリットがかなりありそうです。
1円株式会社の可否や作り方については「経営サポートプラスアルファ」に相談しましょう
制度的には1円で株式会社の設立は可能で、作り方も特に資本金300万円や1000万円のときと違いはありません。
2006年の新会社法施行以前と比べて、株式会社設立というハードルは非常に低いものになりました。
しかし、資本金1円という事実や実際の経営上では、メリットよりもデメリットが多い可能性もあり、専門家の意見も聞きながら慎重に判断してください。
会社設立などに詳しい専門家集団として「経営サポートプラスアルファ」があります。
経験豊富な専門家が適切にアドバイスします。
「経営サポートプラスアルファ」は土日祝日夜間も対応します。
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資本金1円での株式会社設立のメリットやデメリットなども合わせてお話しさせていただきます。
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