【税理士が解説】法人化の5つのメリットとは?法人化の意味についても詳しく紹介

個人事業主として事業を始め、成長が見込まれる段階で「法人化」を検討することは、多くの起業家にとって大きな決断です。法人化には、税務上のメリットや事業の信頼性向上など多くの利点がある一方で、運営コストや手続きの複雑さといったデメリットも存在します。

本記事では、法人化のメリットとデメリットについて詳しく解説し、事業を法人化すべきかどうかの判断材料を提供します。法人化を検討している方にとって、適切なタイミングと理由を見極めるための参考になるでしょう。

法人化とは、個人事業主としての事業運営をやめ、株式会社合同会社などの法人格を取得して、法人として事業を行うことを指します。法人は、法律上「個人」とは独立した存在として認められ、企業としての活動が法的に認められます。

法人化により、事業主自身が負っていた責任や税務面での扱いが変わるため、個人事業主のまま続けるよりも有利になる場合があります。特に、事業の規模が大きくなり、収益が増加するタイミングでは、法人化を検討することが重要です。

法人化には多くのメリットがあり、事業の成長を促進する上で重要な選択肢となることが多いです。以下では、法人化の主要なメリットを具体的に見ていきます。

1. 節税効果

法人化の最大のメリットの一つが、節税効果です。個人事業主の場合、所得税は累進課税方式で、所得が増えれば増えるほど税率が高くなります。最高税率は45%にも達するため、高所得者にとっては大きな負担となります。

一方、法人税率は一定で、**中小企業の場合は23.2%**が適用されるため、個人事業主よりも税率が低く抑えられます。また、法人化することで役員報酬を自分に支払うことができ、給与所得控除を利用して個人の税負担を軽減することも可能です。この仕組みにより、収入が増加した場合でも、法人化することで大幅な節税が期待できます。

さらに、法人として認められる経費の範囲も広がります。個人事業主としては認められないような支出(自宅の一部を事務所として利用する場合の家賃や車の維持費など)も、法人であれば経費として処理できる場合があります。

2. 社会保険料の調整

個人事業主として事業を運営している場合、国民健康保険や国民年金に加入する必要がありますが、収入が増えるにつれてこれらの社会保険料も増加します。法人化することで、厚生年金健康保険に加入でき、社会保険料の調整が可能になります。

法人化すると、役員報酬を自由に設定できるため、報酬額に応じた保険料を調整することができます。さらに、法人としての社会保険制度に加入することで、将来的な年金受給額が増えるというメリットもあります。これにより、個人事業主よりも法人化した方が、社会保険料を最適化できるケースが多くあります。

3. 事業の信用力向上

法人化によって得られるもう一つの大きなメリットは、事業の信用力の向上です。法人格を持つことで、取引先や金融機関からの信頼が高まり、ビジネスチャンスが広がります。特に、大手企業や公共機関と取引する場合、法人であることが条件となるケースもあります。

また、金融機関からの融資を受ける際も、法人化することで信用力が高まり、より良い条件での融資が可能になります。個人事業主としての資金調達が難しい場合でも、法人としての財務基盤が整っていれば、融資の審査が通りやすくなります。

4. 事業の継続性

法人は独立した法的存在であるため、経営者が交代したり、万が一経営者が死亡した場合でも事業は継続されます。個人事業主の場合、事業主自身が事業の中心であるため、事業主の引退や死亡に伴い、事業が終了することが多いです。しかし、法人化すれば、事業を別の役員や従業員に引き継ぐことが可能であり、事業の継続性が確保されます。

この点は、特に家業や長期的に発展させたいビジネスにとっては大きなメリットです。法人化することで、事業を将来的に誰かに引き継ぐことを見据えた経営がしやすくなります。

5. リスクの分散

法人化することで、事業リスクを分散することができます。個人事業主の場合、事業の債務や損失はすべて事業主個人に直接影響します。しかし、法人化すれば、法人と個人は法律上独立した存在として認識されるため、会社が負った債務は法人に帰属し、経営者個人の財産に影響を与えることはありません。

これにより、事業上のリスクを法人に限定し、経営者個人のリスクを最小限に抑えることが可能です。

法人化には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。法人化する前に、これらのデメリットを十分に理解し、事業の規模や将来の展望に応じて適切な判断を下すことが重要です。

1. 設立費用と維持費用

法人化する際には、設立時に登録免許税定款認証費用などが発生します。株式会社を設立する場合、登記にかかる登録免許税は**資本金の0.7%**で、最低15万円が必要です。また、定款認証に約5万円の費用がかかるため、初期費用は個人事業主に比べて高額になります。

さらに、法人を運営していく上で、毎年の決算書作成税務申告などの業務が必要であり、これらを税理士に依頼する場合、顧問料が発生します。特に、法人税の申告には専門的な知識が求められるため、法人の維持費用として税理士への報酬が必要になることが一般的です。

2. 社会保険料の強制加入

法人化すると、経営者自身も厚生年金健康保険に強制加入しなければならなくなります。個人事業主の場合、国民健康保険や国民年金に加入することで、比較的自由に保険料を調整できましたが、法人化すると厚生年金や健康保険の加入が義務化され、保険料の負担が増える可能性があります。

特に、役員報酬を多く設定すると、それに応じて社会保険料も増加するため、短期的にはコストが上昇することがあります。この点を考慮し、法人化後の保険料負担を見据えて報酬額を決定することが重要です。

3. 経営の複雑化

法人化すると、事業の運営が複雑化します。取締役会や株主総会を開催し、決算報告書を作成するなど、個人事業主では不要だった法的手続きが求められます。また、法人の資金管理や財務状況を透明にするための報告義務も増えるため、日常的な経営管理にかかる時間や労力が増加します。

特に、複数の株主がいる場合は、株主間での意見調整や利益配分など、経営における意思決定が複雑化する可能性があります。

4. 赤字でも法人税がかかる

個人事業主の場合、赤字であれば所得税はかかりませんが、法人の場合はたとえ赤字でも法人住民税が発生します。法人住民税の最低額は年間約7万円であり、これに加えて法人税の申告や決算報告の手続きが必要です。

赤字の期間が長引いた場合でも、これらの税金や運営コストがかかるため、事業が不安定な初期段階では大きな負担になることがあります。

法人化を検討する際には、適切なタイミングを見極めることが重要です。一般的に、以下のような状況で法人化を考えるべきタイミングが訪れます。

1. 年収が500万円から800万円を超えたとき

収入が増加し、所得税や社会保険料の負担が大きくなってきた場合は、法人化による節税効果が期待できます。特に、年収が500万円から800万円を超えると、法人税率の方が有利になることが多いため、節税を目的に法人化を検討するタイミングです。

2. 取引先から法人化を求められたとき

取引先が法人との取引を条件にしている場合や、法人化した方が信頼性が高まる場合は、事業拡大を見据えて法人化することが推奨されます。特に、大手企業や公共事業に参加する場合、法人格が必要とされるケースが多いため、法人化することでビジネスチャンスが広がる可能性があります。

3. 事業が拡大し、従業員を雇用する際

事業が成長し、従業員を雇用する段階に入ったら、法人化を検討すべきです。法人化することで、従業員の福利厚生を充実させ、労働環境を整えることができるため、優秀な人材を確保する上でも有利です。

法人化には、多くのメリットがあり、事業の成長や節税対策、信用力向上に役立ちますが、デメリットも存在します。設立費用や維持費用、運営の複雑化を理解し、事業規模や将来のビジョンに合わせて適切な判断をすることが重要です。

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