今回は会社設立時、資本金を見せ金にすることを解説します。
新しく会社設立を考えるとき自己資金が不足している事態は往々にして起こりうることです。
そのときあなたは「見せ金」でごまかしてしまおうという発想になるかもしれません。
そもそも会社設立時、資本金の見せ金とはどのようなものなのでしょうか。
そして資本金の見せ金のリスク、違法性についても解説したいと思います。
会社を設立しようと思っている方はアクションを起こす前に是非一読ください。
会社設立時の資本金の見せ金とは
資本金の見せ金とは、会社設立時に資本金に相当する資金が本当にあるかのように見せかけることです。
実際に会社にお金はないのですが、一時的に資金を借金して会社設立したらすぐに同額を一切返済してしまうことです。
例えば彼女に良いところを見せたいと思っている彼氏も多いでしょう。
そのような男性がお金がないのにカードローンで借金をして高級ブランドの服を購入したり、高級レストランに招待したりして彼女の心をこちらに向かせようとします。
彼女は彼のそのような行為は涙ぐましい行為を評価することができるでしょうか。
そうではなく女性たちは、彼氏にお金がなくて全部借金でこさえた嘘だとわかれば騙された気持ちになり憤慨してしまうでしょう。
会社の世界でも同じといっていいでしょう。
実際に資金はあるかのように見えますが、それは本当の意味あいでは資本金ではありません。
債権者であったり関係している方々は騙されたと思ってしまうでしょう。
なぜ見せ金が必要となるのか
会社設立をしようと思えば、一番最初に必要なのは資金です。
会社設立時に資金はコツコツ貯金しておかなければならないでしょう。
しかし突然会社設立をしようと思い立ったりすれば、自己で資金を貯める時間がないということもあります。
現在1円起業が法律改正で実現できるようになりましたが、一方では資本金は会社の信用のバロメータのような性質があるので、資本金はある程度を確保しておかなければならないと考えられます。
1円起業で法律的に認められていたとしても、実際に会社設立時資本金を設定する時には数ヶ月分のランニングコストを計算して決定することがほとんどです。
会社設立を目の当たりにして判断を見誤っていたということもあるでしょう。
資本金があまりにも少なすぎることで倒産リスクを抱えてしまうことになり、金融機関から融資を得たいと思っても得ることができるハードルは相当高いです。
最近は会社設立を若い人たちがするケースが多く、お金をあまり持っていない人たちが多いのです。
そのような人たちが資本金10万円しか持っていない場合、見せ金でごまかしてやろうという姿勢が生まれてくるでしょう。
しかし資本金の見せ金を課題として扱わなければならない理由は、そのような行為は公正証書原本不実記載等罪に当たってしまう危険行為であることです。
会社設立のノウハウをお持ちではない方は、なんの悪気もなくそのような行為をしてしまうのかもしれませんが、かなり注意しなければならない問題です。
許認可取得のときに最低資本金額設定がある業種がある
会社にはさまざまな業種がありますが、事業をしたいと思っても許認可取得のときに最低資本金額が設定されていて簡単には出来ないことがあります。
例えば職業紹介事業は500万円以上、人材派遣業の場合は2,000万円以上という資本金に対しての取り決めがあります。
人材派遣業は儲かる仕事だからといっても資本金は2,000万円以上必要だから容易に乗り込むことができないでしょう。
もしもそのような業種に乗り込むことができれば資本金の高い設定があるからライバルが少ないと考えることも出来ます。
会社設立時に資本金の見せ金はいずれバレるもの
会社設立時、資本金の見せ金で資本金が潤沢であることを偽装すれば、ほかの会社と取引したとき資本金が潤沢なので「この会社は信用できる会社である」と判断するでしょう。
取引先は会社の資本金を見せ金ではないかと調査することはないので、バレずにやり過ごすことが出来ると思うかもしれません。しかし、そうでないケースもあります。
融資をしてくれる金融機関ではしっかり調査をしますので、資本金が見せ金であることなど簡単に見破ってしまうでしょう。
会社設立時、創業融資を申込みをするケースでは「自己資金を確認させてください」ということで通帳のコピーが要求されます。
会社設立を考える方は脱サラというケースが多く、通帳をチェックすれば毎月定期的に給料が振り込みされていることでしょう。
通帳履歴で借金したお金が突然300万円程度記載されていたとすれば、融資担当者はおかしいと思います。
そしてあなたに対して「このお金はなんですか?」と聞くことは間違いありません。
親から援助してもらったということも会社設立では充分考えることができる方法です。
そのようなときは「親から援助してもらいました」とはっきりと言えればいいのです。
融資担当から見せ金だと判断されれば、金融機関とのやりとりにおいて虚偽報告がされたことになり、融資は絶対に受けることができません。
金融機関は調査・審査するプロフェッショナルなのです。
それ程会社設立のノウハウをもっていない人たちがやらかす資本金の見せ金は簡単に見破ってしまいます。
資本金の見せ金と判断される基準はどこにある?
資本金の見せ金と見なされてしまう規準は、入金が一時的かどうかという判断にあります。給料など毎月定期的にお金が振り込まれるものに対しては疑いの目が向けられることはありません。
しかし一時的にまとまったお金が入金されていれば、これは審査を有利に進行させるための見せ金ではないのかと疑いの目を持たれる可能性があります。
次に不定期的なものに対して合理的理由が存在しているかという点です。
まとまった金額のお金が振り込まれていたとしても、融資担当は全部を見せ金だと疑うわけにはいきません。
親から贈与されて確定申告も行っているなどと言った理路整然とした説明と書類の提示が出来れば問題はありません。
逆に合理性が全くないとすれば、それは見せ金かもということを疑われてしまうでしょう。
会社設立時に見せ金にはならない資本金
一時的なものであっても合理的な理由があるのなら、資本金の見せ金ではありません。
資本金を上手く上積みしたいと思えば、そのような方法を見付けてみましょう。
ひとつの方法は、株・不動産・債券などの売却益を資金とすることです。
自身で所有している株、不動産、債権といったものを売却して事業資金とした場合、何も問われる疑惑はありません。
証拠も聞かれたときには提示することができるでしょう。
次にタンス貯金を定期的に口座へ入金する方法です。
タンス預金も見せ金ではありませんが、問題はなかなか証明できないことです。
タンス貯金は充分融資担当に疑われてしまう要因はありますので、定期的に入金をするという姿勢をもつといいでしょう。
月1回ペースの金額ということであれば、ある程度の妥当性をキープすることができるのではないでしょうか。
また宝くじをあてた、親から援助してもらいましたということを主張しても融資担当は適当なことを言ってごまかしていると思ってしまうかもしれません。
本当にそれが事実であるのか証明することができる資料、書類が必要です。
どのようなケースにおいても自己資金ということができる客観性が存在していることが大事なポイントです。
資本金の見せ金で会社設立したリスクはあるのか
会社設立時に資本金を見せ金でごまかしてしまったときリスクがあるので、注意が必要です。
とくに注意しなければならないのは、
- 会社設立自体無効となってしまうケース
- 発起人に税金を支払いしなければならない負担が生まれるケース
- 公正証書原本不実記載等罪に当たるケース
- 見せ金を隠蔽して脱税になるケース
以上の項目です。
会社設立が無効となってしまうケース
会社法第52条の2では、資本金の見せ金に対して出資の履行を仮装した場合の責任について、発起人に払い込みを仮装した出資金額全額を支払う義務を定めているので安易に考えないほうがいいです。
資本金の見せ金が無効とされ、会社法で必要としている財産をクリアすることができなくなってしまい(会社法27条4項)、 結果として設立無効原因(会社法828条1項1号)に該当してしまうことになります。
発起人に税金を支払いしなければならない負担が生まれる
会社設立時に資本金を見せ金でごまかした場合、会社発起人に対して税金の支払い義務が生じることがあります。
見せ金が使用された場合、会社設立した後に会社の口座にあったお金が再び発起人に戻される点に関連します。
会社のお金を発起人に支払っているという流れは、役員報酬と解釈されることになり役員報酬にかかる税金をプラスして支払いしなければならないことになります。
公正証書原本不実記載等罪に当たる
会社設立時の資本金の見せ金は、本来存在していないお金です。
資本金偽装をして会社登記等を申請した場合、公正証書の原本に事実ではない記載または記録がされることになり、行為自体が「公正証書原本不実記載等罪」に該当する可能性が充分あります。
「公正証書原本不実記載等罪」の罪に問われることになれば、刑法157条の規定によって5年以下の懲役また50万円以下の罰金が科せられることになります。
見せ金を隠蔽して脱税になる可能性
見せ金を返済しようと思えば、会社から個人にお金を移動させることになります。
このような作業をするときにはレシートや領収書をまとめて経費扱いにしてしまう方が少なからずいます。
しかし注意しなければならないのはそのような行為は脱税行為と見なされることがあることです。違法性がありますので注意してください。
人には聞けない資本金とは
そもそも「資本金がどのようなものかわからない」という声も聞くことがあるので、以下で解説をします。
会社設立時に問われる資本金とは、会社が事業を営む際の元手のお金のことです。
会社設立時に登記の印紙代や事務所を借りるための保証金、パソコンを買う費用などに対しいろいろ支払いしなければならない費用がかかってしまうことになります。
最初にまずは仕入をしなければ先に進むことができないという業種もあります。
会社設立時、初期について考える必要があります。お金は一体どこから調達すればいいのでしょうか。
商売が軌道に乗って儲けることができれば利益から投資すればいいということになりますが、初期の初期ではまだ商売もスタートしていない状態です。
そして初期投資は株主が出してくれる、これが株式会社の資本金のあり方です。
また資本金は自己資金も該当します。
- 自身で通帳に貯めたお金
- 贈与してもらったお金
- 退職金
- 自己資産を売却して出たお金
- 設備投資費用
といったお金は資本金です。
見極めのポイントは通帳でお金の出どころがしっかり確認することができるかです。
通帳に計上されることのないタンス預金などは、自己資金と呼ぶにはあいまいさを持ってしまうことになります。
資本金についていろいろ誤解している方が多いですが、資本金は通帳に残し使うことができないお金ではありません。
資本金は初期投資のためのお金であり、会社が軌道に乗るためどんどん消費していいお金です。
かえって資本金がいつまでも資本金のまま通帳に残り続けている状態も「本当に株式会社のことがわかっているのか」と疑われてしまうかもしれません。
資本金は会社設立した後いつでも引き出し出来るもの?
会社設立時に資本金として設定したお金は、いつでも事業を成長させるために使用していいお金です。
以前の法律ではそうでなかったため、情報が混乱している方は注意が必要です。
会社法が平成18年5月1日に施行される以前は、資本金として会社に振り込みをしたお金に対しては設立して一ヶ月間は使用出来ないというルールがありました。
現在は会社設立してすぐにそのようなお金を使用することができるようになりました。
資本金をたくさん持っている会社は「この人がしている事業を応援してくれている人たちが大勢いるんだ」という判断材料にすることができますが「現在、この会社はたくさん資金がある」という判断材料にはならないことになります。
現在資本金は潤沢に潤っているというのにお金は使用してしまって会社の資金は資本金の額を大きく下回ってしまったという方もいらっしゃるでしょう。
それも資本金のあり方です。このような事態になってしまったから資本金を補おうという姿勢も持つ必要はありません。
どのように資本金を決定すればいいのか
会社で資本金を決定する時、どのような点に注意をすればいいのでしょうか。
資本金は多くすればいいということではなく、多くすることで無駄な税金の額も増えてしまうことになりますので妥当な金額を模索していく必要があります。
まず資本金の額を決定する段階で大事なポイントになることは「資本準備金」についてです。
会社法445条において、発起人だったり株主による出資金は、そのまま全部を資本金にする必要はないということを定めています。
1,000万円の出資を得ることができた会社は、500万円まで資本準備金としてプールすることができます。
そのような事項がどのように資本金の額を決済することにつながるのかといえば、資本準備金を増加させることで出資額をあれこれ変えることなく、資本金の額を調整できます。
融資を得ることができるのは、資本金の額が少ない会社と多い会社とではやはり資本金の額が多い会社の可能性も高いですし、取引先から信用も得やすいということができます。
資本金で何もかも測ることはなかなか難しい面はありますが、それでも会社の世界で大きな目安として利用されていることも事実です。
資本準備金のメリット
前提として会社設立時に株主が資金を振り込みすることになります。
振り込みしたお金は資本金として計上されるはずです。
しかし振り込みした資金は全部資本金にする必要はありません。資本金ではなく資本準備金のジャンルで扱えばいいということです。
資本準備金は資本金の半分までというルールがあります。
資本金が1,000万円ということになれば、半分の500万円を資本準備金とすることができ自己資本は1,500万円となります。
資本準備金と資本金は実務的には違いはありません。両方とも事業のため使用することができるお金です。
だとしたら資本金と分ける必要がないといういい方も出来るのかもしれません。
そうではなく資本金の扱いは難易度が高いため、あえて資本準備金というジャンルに分けているのです。
資本金も自由に使用することができるお金ですが、実際には様々な規制であったり手間に縛られていたりするものと考えてください。
本当の意味で自由に使用することができるものが資本準備金ということになります。
資本準備金に対しては、登記も必要がありません。
資本金の取り扱いには株主総会で特別決議が必要ですが資本準備金はそうではありません。
会社設立時資金調達の方法
会社設立時資本金の見せ金は違法性あり相当リスキーなので、しないに越したことはありません。
一方で会社設立時資金を調達しなければならないという方は、日本政策金融公庫の利用を検討してみるといいでしょう。
日本政策金融公庫を利用する
資金調達の具体的方法としてひとつは、日本政策金融公庫を利用することです。
日本政策金融公庫は100%政府出資の金融機関です。
会社を創業しようと思っている方にとって頼ることができる資金調達先ということができます。
またお金のない人たちを支援する制度にもなるので、低金利で融資を受けることができるメリットがあります。
国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の事業が行われていますが、創業者が利用する融資は国民生活事業の扱いです。
日本政策金融公庫の融資を受けるためには、既に述べたことから判断すれば資本金の見せ金がないか審査を受けることになります。
日本政策金融公庫の融資の場合は、100万円の資本金でなんとかクリアすることができる水準なので、見せ金にする必要はないのではないでしょうか。
日本政策金融公庫は実績がない方でも容易にお金を借りることができる方法です。
日本政策金融公庫は、銀行などの民間金融機関からお金を借りることよりも審査は通過しやすいと考えることができます。
しかし準備は必要です。
準備がいい加減な方にとって審査はキツイと感じてしまうかもしれません。
必要な準備とは、日本政策金融公庫へ提出する創業計画書などの書類作成です。
そして資本金は1円起業と言っている方はなかなか日本政策金融公庫からの融資は受けられないのかもしれません。
面談もありますので、面談対策もしっかり備えなければならないです。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は会社設立時資本金の見せ金について解説しました。
今回お話ししたのは、会社設立時資本金の見せ金にしてしまうリスクです。
「見せ金」は違法行為であり会社の信用を失うばかりではなく最悪のパターンでは、行政罰・刑事罰の対象となりえますので絶対してはならない行為です。
資本金の見せ金にはならない事例もいくつかあります。
親から援助を受けたという場合は見せ金ではないので、金融機関が疑いの目を持てばそれを証明すればいいのです。
事業性が認められる個人名義からの振り込み、タンス預金の口座振り込み、株などの自己保有資産の換金あたりも証明することができればいいのです。
会社設立時資金を調達しなければならないという方は、日本政策金融公庫を利用する方法などを検討してみましょう。