勤務医の節税に効果的な対策は?4つの節税方法や法人化についても解説

キャリアを積み重ねた勤務医の報酬は、一般的な会社員と比べてとても高額です。

しかし、報酬が増えても、喜んでばかり居られません。

日本の税制では、稼げば稼ぐほど、税額が高くなります。

せっかく稼いだ報酬を高額な税金で消費したくない、と考える勤務医の人も多いのではないでしょうか。

できれば、高額な税金を納めるよりも自分のために使いたいところです。

記事内では、勤務医が取り組むべき節税方法の紹介や、税金のしくみについて紹介しています。

税金の高さが気になる人は、ぜひ記事内容をご確認ください。

勤務医ができる4つの節税方法

雇用形態にもよりますが、基本的に勤務医は一般的なサラリーマンと同じく給与所得者として税金を納めます。

開業医に比べると、節税の範囲は限定的です。

とはいえ、出来る範囲での節税は試みたいところです。

この項では、給与所得者として考えられる節税方法を以下に4つ紹介します。

不動産投資

所得が高い場合は、不動産投資による節税が効果を発揮します。

不動産投資の節税ポイントは、減価償却費です。

不動産の物件購入費は、減価償却費として経費に計上できます。

減価償却費を経費計上している間、不動産所得は赤字となるケースが多くなります。

赤字となった不動産所得は、給与所得と相殺できるため、結果として納税額を減らすことができるのです。

不動産は資産の圧縮効果があるため、相続税としても有効に活用できる点も見逃せないポイントです。

オーナーとして運用すると定期的な家賃収入もあるため、投資として検討の余地もあります。

プライベートカンパニーの設立

勤務先で副業が認められていて、かつ副業収入の割合が多い場合はプライベートカンパニーの設立で節税ができます。

所得が高くなればなるほど収める税率が高くなるため、法人の収益として税金を収めたほうが節税になる、という考え方です。

必要経費として認められる範囲が広く、法人の保険利用や、家族を役員や従業員として所得を分散させるなど、法人設立は節税ポイントが多くあります。

しかし、運用にはコストがかかり、長い間活動していないと実態のない会社とみなされ、脱税を疑われるなど、注意すべきポイントも。

法人化は収入と支出のバランスを考えつつ、検討しましょう。

基礎控除や給与所得控除を受ける

給与所得者として、基本的な節税方法です。

収入に応じて給与所得から等しく控除される基礎控除と、給与所得控除があります。

給与所得控除と合わせてうけられる主な控除は以下のとおりです。

  • 配偶者控除や扶養控除
  • 各種保険料の控除
  • 住宅ローン控除
  • 医療費控除

配偶者控除が受けられる条件は、年収1,000万円以下で配偶者の所得が扶養の範囲内の場合に限られます。

所得控除が多いと税額を減らすことができますが、節税には限界があります。

大きな節税効果を望むのは難しいでしょう。

特定支出控除を受ける

特定支出控除は給与所得者のみに適用されます。

給与所得者に与えられた経費精算の制度です。

特定支出控除額の計算式は、特定支出額−給与所得控除額×0.5で計算されます。

給与所得が500万円の場合、500万円×0.2+44万円=144万円。

特定支出額が100万円の場合、100万円−144万円×0.5=28万円という計算です。

こまごました費用を経費計上できるメリットがあります。

特定支出控除を受ける場合、支出に対する特定支出証明書や明細書、領収書が必要です。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

節税効果が高い2つの方法を深堀り解説

前述の節税方法の中から、勤務医にとって節税効果の高い2つの方法について、より詳細な内容を紹介します。

特定支出控除

特定支出控除は、事業所得者よりも経費計上がしにくい給与所得者が経費として計上できる範囲を広げるために制度がスタートしました。

特定支出控除の項目は以下のとおりです。

  • ガソリン代・高速道路料金などを含む通勤費
  • 出張費など職務上の旅費
  • 単身赴任中の帰宅旅費
  • 異動や転勤でかかった転居費
  • 学会の参加費などの研修費
  • 職務上必要な資格取得費
  • その他の勤務必要経費※最大65万円

勤務医は、通勤や移動にかかる費用が多く、専門書の購入などで経費が多くなる傾向があります。

特定支出控除の制度をうまくつかうと、所得が多い勤務医ほど節税の効果が得られるでしょう。

その他の経費は、医学書や定期刊行物、新聞や雑誌、電子書籍、有料メルマガなどの図書費、白衣や術衣などの衣料費、医局の親睦会や他の医師との交際費、接待費が挙げられます。

その他経費の上限は55万円です。

申請は経費とする費用の領収書や明細書を添えて、確定申告にて申請します。

プライベートカンパニー設立

勤務医が節税目的としてプライベートカンパニーを設立すると、業務に関わる支出とされるものはすべて経費計上できます。

経費にできる具体的な項目は以下のとおりです。

  • パソコンの購入費
  • 車両の購入費
  • 社宅としてつかう住宅購入費
  • 医学書の購入費
  • 接待や交際費

前述の特定支出控除よりも、広範囲に経費計上できます。

住宅や車の費用まで経費計上できますので、かなりの節税効果が期待できるでしょう。

本業の勤務医の収入の他に副業が多い場合に、プライベートカンパニーによる節税効果が発揮されます。

勤務医の主な副業は以下のとおりです。

  • 他の病院での非常勤勤務
  • 講演
  • 書籍や雑誌の執筆

本業の医療行為に関わる業務以外の仕事をプライベートカンパニーで請け負うと、経費精算や所得の分散により大幅な節税効果を見込むことができます。

プライベートカンパニーの設立費用やランニングコストを考慮した上で、副業での収入が多い場合、設立を検討しても良いでしょう。

<あわせて読みたい>

勤務医と開業医が支払う税金の違いとは?

勤務医として節税を考える時に、給与所得者と法人経営者の税金の違いについて知っておくことも重要です。

経営者は税金を引かれる前に必要経費を精算し、所得額を決定します。

一方で、勤務医は税金を引かれる前に所得の計算ができません。

以下、それぞれの立場にて税金の算出方法を紹介します。

勤務医

給与所得にかかる税金は、給与から給与所得者控除と、所得控除(社会保険や生命保険、ふるさと納税の寄付金、配偶者控除扶養控除など)を差し引いて計算される課税所得に対して、5%〜45%の所得税が課せられます。

住宅ローン控除がある場合は、計算後の税金金額から税額控除分が差し引かれた金額が収める税金です。

特定支出控除を申請する場合、別途確定申告を行います。

給与所得者は例外を除いて確定申告を行う必要がない代わりに、節税ポイントが限定され、きっちりと税金が取られる仕組みが構築されています。

開業医

会社を運営していると、売り上げを役員で分けて受け取ることができます。

2022年の4月時点の給与所得者控除は、850万円を超える給与に対して、一律195万円の控除です。

例えば役員3人で、役員報酬が一律1,000万円の場合、それぞれ195万円の控除が受けられます。

所得控除が200万円と想定すると、役員の所得税額を一人あたり80万円程度まで圧縮可能です。

その他、会社の資産から将来の退職金積立てを行う、個人名義で支払っていた事業資金の借入返済や生命保険の支払を会社名義に変更、など行うことで個人の資産が手元に残りやすくなります。

勤務医の給与所得に比べると、大規模な節税が出来る点が開業医が支払う税額の特徴です。

勤務医がプライベートカンパニーを作るときの注意点

プライベートカンパニーを作って所得を分けると節税ができますが、誰でも等しく節税の恩恵に預かれるかというと、そうではありません。

法人を作って運用するには、少なくとも設立登記や資本金など、数十万円の設立費用がかかります。

加えて税務顧問量や法人税など、毎年数十万円のランニングコストがかかります。

発生するコスト以上に税金面での恩恵を受けられないと会社を設立する意味がなくなります。

医療行為による報酬は、一般法人で受け取ることができない原則はしっかりと抑えておきましょう。

分散できるのは、あくまでも医療行為でない執筆や講演による事業収入です。

収入の大半が医療行為によるものであれば、思うような節税効果を得ることはできないでしょう。

会社をつくるまでもなく、個人事業主として仕事を請け負うことで足りる場合もあります。

どの程度の副業収入でプライベートカンパニーによる節税効果がでるのか、事前に把握しておきましょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

まとめ

勤務医の節税方法は以下、4つの方法が挙げられます。

  1. プライベートカンパニーの設立
  2. 不動産投資
  3. 基礎控除や所得控除
  4. 特定支出控除

この中でも特に節税効果が見込めるのは、特定支出控除を受けることと、プライベートカンパニーの設立です。

特定支出控除は、給与所得者に設けられた経費精算の意味合いがあります。

特定支出控除は、仕事上で発生する通勤費、出張費、備品代などを経費精算できる制度です。

なにかと移動にかかる費用や備品の出費が多い勤務医は、制度の恩恵を大いに受けることができます。

プライベートカンパニーの設立は、医療行為で得た収入以外の副収入をプライベートカンパニーで受け取り、所得を圧縮、分散できる効果があります。

節税効果を出すためには、十分な副業収入が必要です。

開業医と比べて、節税ポイントがすくない勤務医ですが、所得の内訳次第では節税も可能です。

プライベートカンパニーの設立をお考えの方は、ぜひ、経営サポートプラスアルファへご相談ください。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
勤務医の節税に効果的な対策は?4つの節税方法や法人化についても解説
最新情報をチェックしよう!