会社を経営していくと子会社が必要となる場合があります。
新しく会社を設立して、その会社で様々な事業を展開していくのです。
会社経営を効率化するにあたって、子会社の設立は非常に重要な意味を持ちます。
経営者ならば子会社の設立に関する知識を持っておくべきですが、正しい知識を持っていない人は多く見られます。
今回は子会社の種類、メリットやデメリット、設立までの流れなど基本的な情報をまとめて解説します。
子会社を設立するとはどういう意味か
そもそも、子会社を設立すると言われても具体的な定義や意味、種類が理解できていない人は多いかもしれません。
そのような状態では子会社の設立ができなかったり、設立しても失敗したりします。
まずは、子会社を設立するとはどのような意味合いであるのか理解しておきましょう。
子会社とは
子会社とは会社法に定義があり、以下に該当する関係を指します。
「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」
参考:https://j-net21.smrj.go.jp/qa/org/Q0539.html
一般的には株式の取得などにより、形式的に50%超の議決権を持っている場合を指しますが、それ以外にも実質的に支配していれば該当する場合があります。
支配している側が親会社、支配されている側が子会社です。
子会社の種類
子会社は大きく分けて3種類存在するため、それぞれどのような特徴があるのか理解するようにしておきましょう。
完全子会社
完全子会社は、親会社に議決権のすべてを保有されている会社を指します。
子会社が株式会社ならば、発行済株式の100%を親会社が保有している状況を指します。
親会社のことを完全子会社に対して完全親会社と呼ぶ場合があります。
完全子会社の場合、子会社の業績は親会社の業績に合算可能です。
子会社の情報が個別に開示されることは少なく、一般的には親会社の連結財務諸表に含まれます。
連結子会社
連結子会社は親会社が議決権の過半数を取得して、支配権を持つ会社のことを指します。
共同出資して子会社を設立しているなど、親会社が100%の議決権を有していないものです。
完全子会社ではないものの、連結子会社は親会社の連結決算の対象となります。
連結決算は親会社や子会社、関連企業などをまとめて計算する方法で、連結財務諸表を作成する作業です。
完全子会社ではなくとも、連結子会社ならば親会社の財務情報に含まれます。
非連結子会社
非連結子会社は、子会社ではあるものの上記の連結子会社に該当しないものです。
親会社は子会社のすべてを連結決算するのではなく、場合によっては連結の対象外とできます。
連結の対象外となってしまうと、非連結子会社となるのです。
対象外となる理由は複数ありますが、親会社に対して規模が非常に小さいなどが考えられます。
連結決算では事務手続きが煩雑になるため、業績に影響を与えないような子会社を対象外とするのです。
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子会社の設立で受けられる3つのメリット
子会社の設立によって多くのメリットがありますが、まず理解しておいてもらいたいのは以下のとおりです。
- 売上・経費が明確になる
- 経営面でのリスクヘッジができる
- 意思決定がスムーズになる
売上・経費が明確になる
子会社を設立することで売上や経費が明確になります。
一般的に会社の規模が大きくなればなるほど、部署などが増えてそれぞれの売上や経費が不明瞭になってしまいます。
しかし、子会社を設立すると親会社とそれぞれの子会社は、別々に売上や経費を管理するようになります。
子会社化する前と比較すると詳細な数値が管理できるようになり、損益が把握しやすくなるメリットにも繋がります。
特に経費については間接部門の費用などを損益の算出に反映しやすくなります。
規模の大きな会社ではこのような費用を適切に反映しにくいですが、子会社化すれば問題をうまく解決できます。
経営面でのリスクヘッジができる
親会社から子会社に事業を分離することで、経営面でリスクヘッジが可能です。
まず、子会社を複数設立すると売り上げ面でのリスクヘッジが可能です。
例えばひとつ子会社の事業で大赤字が出ても、それぞれが独立しているため他の会社には大きな影響が出ません。
また、何かしらトラブルが発生して業務停止などの命令を受けた場合も、それぞれが独立しているため他社に影響が出ません。
ひとつの会社ならば社内全体に影響しますが、子会社ならばその会社のみで完結します。
ただ、万が一に備えるというリスクヘッジの観点から、子会社の設立は役に立ちます。
意思決定がスムーズになる
一般的に子会社を設立すると会社の規模が小さくなり、意思決定がスムーズになります。
規模の大きな会社では意思決定や承認に関わる人が多く物事がスムーズに進みませんが、子会社を設立して規模を小さくすれば問題を解決可能です。
なお、ここで重要になるのは「子会社に一定の裁量権を与える」という点です。
子会社を設立しても親会社への相談が必要な体制では、ここでご説明しているメリットを受けられません。
子会社の設立で生じる3つのデメリット
子会社の設立では以下のとおりデメリットも生じてしまいます。
- 設立にあたってコスト負担がある
- 設立後にもコスト負担が続く
- 損益通算できない場合がある
設立にあたってコスト負担がある
会社を設立するにあたっては人的コストや金銭的コストを負担しなければなりません。
会社は簡単に設立できるものではなく、多少なりとも準備をし、お金と時間をかけて設立するのです。例えば以下のコストが生じます。
人的コスト
人的コストの例は、社内での事務手続きに関わる人件費が考えられます。
子会社を設立して従業員に子会社へ異動してもらうとなると、事務手続きをしなければなりません。
また、会社を設立するためには専門的な知識が必要です。
後ほどご説明しますが、多くの書類などを作成して、法務局に届け出しなければなりません。
これらの書類作成に社内で対応するとまとまった時間を要してしまいます。
金銭的コスト
金銭面でのコストの例は、法人登記に関わる登録免許税や資本金が挙げられます。
これらのコストは子会社に限らず会社設立で発生するものであるため、どうしても負担しなければなりません。
他にも、書類作成にあたってプロに作業を依頼するならば、この費用も発生します。
意外と多くのコストが必要となるため注意しなければなりません。
設立後にもコスト負担が続く
子会社は設立時にコストがかかるだけではなく、設立後にもコストが生じるデメリットがあります。
例えば以下のコストが追加で発生します。
事務所などのコスト
子会社を設立する際に新しく事務所などを契約すると、事務所の維持コストが生じます。
例えば新しく事務所を賃貸するならば、契約費用のみならず毎月の家賃を負担しなければなりません。
また、家賃の他にも水道代や電気代などの光熱費も負担が生じてしまいます。
場合によっては、親会社と子会社で同じ事務所を利用するかもしれません。
親会社の保有するビルに子会社を設立する場合などがこれに該当します。
ただ、この場合でも基本的に無償で貸し出すということはなく、賃貸契約を結び少額かもしれませんがコストが生じるはずです。
顧問契約などのコスト
多くの会社は弁護士や税理士などと顧問契約を結んでいます。
新しく設立した子会社もこのような顧問契約を結ぶ必要があり、顧問契約のコストが生じてしまいます。毎月の支払いや年間での支払いなどがこれに該当します。
なお、親会社と子会社で同じ顧問契約を結んだ場合、ボリュームディスカウントを受けられる場合があります。
追加のコストが生じてしまうという観点ではデメリットですが、子会社を設立することで全体的には割引が受けられ、メリットに転じるかもしれません。
損益通算できない場合がある
親会社は子会社と損益通算して、連結納税ができるようになっています。
連結納税とは、それぞれの法人に課税するのではなく、全体をまとまった法人とみなして課税する考え方です。
子会社を設立すると、無条件に連結納税が適用できると考えている人が見受けられます。
確かに子会社を設立すると連結納税が利用できる可能性はありますが、こちらを利用できるのは100%子会社である場合のみです。
子会社の設立にあたって親会社が発行済株式を100%保有しなければ、損益通算はできません。
共同出資して子会社を設立する場合などは、連結納税できないため注意しましょう。
損益通算の計算例
親会社の利益が300万円、子会社の赤字が400万円だった場合、損益通算できるかどうかで以下のような違いがあります。
- 損益通算できる:全体で赤字100万円として税金を計算
- 損益通算できない:親会社と子会社それぞれで税金を計算
100%子会社で損益通算できれば、親会社の利益と相殺できます。
結果、全体では赤字となり課税所得はありません。
しかし、損益通算できない場合はそれぞれに課税されてしまい、子会社が大きな赤字を抱えているにも関わらず、親会社は黒字に対しての納税義務を負います。
子会社の設立に向けた基本的なステップ
子会社の設立に向けては多くのことをしなければなりませんが、今回は以下の基本的なステップに沿ってご説明します。
- 基本事項の決定
- 定款の作成や承認
- 資本金の準備と払込み
- 法人登記書類の作成
- 法人登記手続き
基本事項の決定
子会社の設立にあたっては、最初に基本事項の決定をしなければなりません。一般的に会社の設立には多くの事項を検討する必要があり、子会社の設立に際して例えば以下を検討する必要があります。
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 資本金
- 会社の目的
- 事業内容
- 設立日
- 会計年度
- 株主の構成(比率)
- 役員
会社設立にあたっては決めなければならないことが多数あります。
検討に時間を要してしまうものも多数含まれているため、計画的に決定していくようにしましょう。
なお、すべての事項を決定してから子会社の設立を進めると、時間的なロスが生じかねません。
後から決定しても差し支えない事項も存在しているため、検討と後続の手続きを並行して進めることをおすすめします。
定款の作成や承認
会社を設立する際は必ず定款と呼ばれる文章作成が必要です。
定款は会社の憲法とも呼ばれるほど重要な文章で、これなしに子会社の設立をすることは不可能です。
定款に記載しなければならない内容は法律で定められていて、「絶対的記載事項」と呼ばれます。
最低限以下の内容が定款に含まれていなければ、子会社の設立に必要な文章だと認められません。
- 商号
- 目的
- 本店所在地
- 資本金
- 発起人(合同会社の場合は社員)の氏名や住所
上記の記載事項が揃っていれば定款として認められます。
最低限は上記の内容を含むように定款の作成を進めましょう。
ただ、実際には上記の内容だけでは、記載事項に不足が出てしまいます。
そのような場合は、自分たちで定めておきたい事項を定款に含めても差し支えありません。
例えば、社名の英語表記は絶対的記載事項ではありませんが、必要であれば記載しておくことで正式名称として認められます。
資本金の準備と払込み
資本金は会社を運営するにあたって元手になるお金です。
事業内容などを踏まえて定款に金額を定めているため、その金額を用意しなければなりません。
子会社を設立する際は親会社が資本金を負担するため、定款に定めた金額を親会社が用意します。
お金は用意すれば良いのではなく、資本金として扱うための手続きが必要です。
これは発起人の口座に資本金を入金して、その証跡を残す作業を指します。
必ず資本金に該当する金額を入金しなければなりません。
例えば資本金が100万円の場合、発起人となる親会社の銀行口座に100万円が入金されているだけでは資本金として認められません。
一度100万円を出金してから、改めて入金する作業が必要です。
また、入金した事実は後から把握できるようにしなければなりません。
通帳のコピーなどを取得しておきましょう。
法人登記書類の作成
資本金の準備が完了すれば、法人登記書類の作成を進めます。
ステップとしては順番にご説明していますが、先行して準備できる部分については、他の作業と並行して準備することが可能です。
子会社を設立する際も一般的な会社設立と同様の書類作成が必要で、例えば以下の書類を用意する必要があります。
- 登記申請書
- 収入印紙貼り付け台紙
- 定款
- 資本金の払込みを証明する書類
- 印鑑証明書
- 印鑑届書
- 登記事項
これらは一例で状況によって多少の変化があります。
具体的にどのような書類が必要となるのかは、法務局のWebサイトで細かく確認可能です。
専門的な書類作成が必要となるため、必要書類については事前に確認して計画的な準備が求められます。
また、必要書類の中には印鑑証明書のように、役所に出向いて発行してもらうものが存在しています。
発行してもらう書類については自分の都合だけでは用意できないため、こちらについても計画的に準備することを心がけておきましょう。
法人登記手続き
法人登記に必要な書類作成が完了すれば、後は法務局に出向いて法人登記の手続きをするだけです。
法務局には法人登記を受け付ける窓口が存在するため、子会社の設立に必要な書類を提出しましょう。
書類の数が足りているかどうかなどが確認され、特に問題なければ書類の受け取りをしてもらえます。
書類の提出が完了してから法人登記が完了するまでには2週間程度必要となります。
書類を提出してもこの間は法人格がないため、すぐに子会社として活動ができるわけではありません。
子会社の設立を考えているならば、法人登記に必要な時間を踏まえ余裕を持ったタイムラインを引きましょう。
また、法人登記に必要な書類を提出してから内容の間違いが見つかると法務局から連絡がきます。
対応しなければ子会社の設立が遅くなってしまうため、もし何かしらの指摘を受けた場合はスムーズに対応しなければなりません。
言い換えると2週間ほど法務局から連絡がなければ、問題なく法人登記が進んでいると考えられます。
まとめ
子会社を設立するにあたって知っておかなければならない基本知識やメリット・デメリットについてご説明しました。
子会社を設立するメリットが注目される傾向にありますが、実際にはメリットだけではなくデメリットも存在しています。
これら両方に注目して子会社を設立するかどうか考えなければなりません。
具体的に子会社を設立する場合、手続きの内容は一般的な会社設立と大差ありません。
部分的に子会社独自の考え方が存在しますが、ほぼ会社設立の流れだと理解しておいて良いでしょう。
子会社の設立に向けた基本的なステップはご説明しているため、詳細についてはよく確認しておいてください。
なお、自分たちで子会社を設立するのが不安な場合は、24時間受付で手数料無料の経営サポートプラスアルファへご相談ください。
会社設立のプロが子会社の設立に向けて、皆さんを全面的にサポートします。