1円起業では不安?資本金をあとから増やす方法について

1円起業ができる時代になり、起業しようと意欲的な若い人たちが増えています。

1円で起業をスタートすることができるのなら失敗しても痛手はないでしょう。

しかし誤解してならないのは、起業することができても継続できるということではありません。
資本金はとても重要です。

そのため資本金をあとから増やすことを考える方も多いのではないでしょうか。

今回資本金をあとから増やす方法、あとから増やすことに対してのメリット、デメリットについて解説します。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金は少なくて問題なしは事実か?

2006年5月に新会社法が商法改正により施行されました。新会社法では1円の資本金でも株式会社の設立が可能となったのです。

古い制度では有限会社は最低レベルで300万円、株式会社の場合は1,000万円必要とされていました。それが最低1円でOKということになったのです。

ただし1円株式会社は以前でも特例制度で設置することができたのです。

特例制度の条件には、設立後5年以内に資本金は最低資本金まで引き上げしなければならないとあります。

現在実質的には1円起業が法律上OKということになっていても、会社設立には費用が必要なので、本当に1円で起業出来るかといえばそうではありません。

資本金という言葉は日常的に使用される言葉ですが、どのような意味として使えばいいかわからないという方々も多いので意味についても解説します。

資本金とは

資本金は自分自身のお金のことを言います。

人からお金を借りれば債務ということになるので、自身の資産よりも債務の方が上へ行って

しまえば「債務超過」ということになります。資本金が1円ならすぐに債務超過の状況に陥ってしまうことでしょう。

起業して間もない頃にはビジネスモデルを構築していかなければならないため、新規開拓にもお金がかかってしまうことになります。

1円起業では、ゆとりを持って本格的に起業をスタートできるというわけではないのです。

また資本金=信用と言っていいでしょう。

以前は1円起業と言ってもてはやされていたことがありましたが、逆に1円起業では他のやりとりしなければならない会社からなかなか信用を得ることができないのです。

銀行が会社に融資しようと考えるときでも、資本金の額に注目をしています。

資本金が多く債務が少ない状況が、他人には依存しないで「自分自身の儲けだけで成り立っている会社だ」という信用につなげられます。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金をあとから増やす意味を考える

増資とは資本金をあとから増やす意味です。

株式会社が増資する時には株式を新規発行することになり、株主となる人たちに出資してもらい株式をその人に対して交付することになります。

増資の場合、出資は既存株主、第三者でもOKです。

第三者から出資してもらうことで新しい株主が誕生することになります。

また既存の株主から出資してもらったという場合には、いままでの持株比率が変わってしまうことがあるので配慮する必要があります。

増資として入ったお金は借入金とは異なり、返済期限が決められていないお金です。

ですから会社は増資をして得ることができた資金を新規事業にあてることができます。

会社設立に必要な資本金を借り入れする

起業するとき、個人で融資を受けてそれを資本金にすることを考える方々もいるのではないでしょうか。

しかし借りたお金を資本金に充てるのはNGなので注意してください。

例えば、自己資金は100万円ある状態で、プラスして銀行から200万円借りて資本金を300万円として会社設立をすることです。

原則として資本金は借りたお金はNG、公的機関の融資制度や銀行、信用金庫の借入、カードローンを使用したり親から借りることもNGとなります。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金をあとから増やす2つのデメリット

資本金をあとから増やすことで発生するデメリットは、以下の2つです。

  1. 増資手続きにコストがかかってしまう
  2. 税金の負担が増えるリスク

1.増資手続きにコストがかかってしまう

資本金をあとから増やすと、手続きが必要で結構面倒くさいと感じてしまうこともあるでしょう。

増資を行えば、まずしなければならないことは法務局で会社の登記事項の変更です。

また登録免許税の支払いも済ませる必要があります。

登録免許税は「3万円」、「増加した資本金額に1000分の7を乗じた金額(0.7%)」のどちらか大きいほうの金額です。

なかには本業が忙しくて自分では出来ないという方々がいらっしゃるでしょう。

そのような人たちは、司法書士に全部丸投げしてしまうことがあるかもしれません。

司法書士に依頼する場合は、報酬の支払いが必要なことを知っておいてください。

司法書士によって額に違いがありますが、10万円あたりかかることもあります。

増資した額によって司法書士の費用も変わります。

2.税金の負担が増えるリスク

資本金をあとから増やすことで会社の利益が増える訳ではないので税金は増えないと楽観的に考えるかもしれません。

しかし資本金の額は会社の規模を示す材料となるため、資本金の額が増加することで税金の負担が増えてしまう可能性があります。

例えば法人住民税を均等割で収めているとき、税金の額は従業員数と資本金の額の違いによって変わっていきます。

東京都の場合は従業員数:50人以下、資本金:1,000万円以下のケースでは均等割の額は7万円となっていますが、従業員数:50人以下、資本金:1,000万円以上となれば均等割の額は18万円にアップします。

消費税についても見てみましょう。

会社設立したという方々は、設立1期目と2期目は資本金の額が1,000万円未満であれば支払いしなくてOKです。

しかし資本金が1,000万円以上に増えてしまうことで、設立1期目から消費税の納税義務が生まれることになります。

資本金をあとから増やすことにはメリットもありますが、額が増えてしまうことで税の負担は充分増える可能性があることもあらかじめ理解して向きあう必要があります。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金をあとから増やすメリット

資本金をあとから増やすメリットは、以下の2つです。

  1. 資金調達できる
  2. 会社の信用がアップする

1.資金調達できる

増資する理由は、手元の資金を増やすためです。

株主から出資を受けて資本金としたお金は株主に対して返済義務のある借金ではありません。

そのため気がねなく長期の視点に立ち、設備投資や新規事業にお金を使用して会社を大きくできます。

どのような使い方をしなければならないという決まりもないので、ほかの使い道をすることができます。

金融機関からお金を融資してもらい、会社を成長させることも可能です。

ただし少なからず金銭的負担が生まれるので、融資を受ける際は計画的に行いましょう。

増資という発想なら資金を調達して会社をどう大きくすればいいかということ注力できるでしょう。

2.会社の信用がアップする

会社が大きく成長していくためには、金融機関からの融資も必要不可欠と言っていいでしょう。会社はどんどん新しい取引先を見つけなければなりません。

しかしそのような段取りのステップでは、相手から会社の決算書を見たいということが要求されてしまうことがあります。

会社には信用度であったり資金力が大事な項目です。資本金をあとから増やすことで、それだけ資金調達能力をアップさせることができ、資金に余裕を持っている会社であると判断され信用もアップしていきます。

なかなかいい取引先を確保出来ないという会社は、資本金をあとから増やすことで相手会社から見られ方が変わりいい取引ができる可能性も高められます。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金をあとから増やす選択肢

資本金をあとから増やす手続きについてお話しをします。

資本金をあとから増やす方法には、

  1. 公募増
  2. 株主割当増資
  3. 第三者割当増資

という方法があります。

1. 公募増資とは

公募増資とは、既に出資してもらっている既存株主であったり特定第三者だけでなく一般の投資家も株式を取得することができる増資スタイルを言います。

規模の小さい未上場企業がこのような方法を取ることはあまりなく、上場会社のための手続きの方法と言うことができます。

それは他の選択肢とは違いある程度の知名度が必要であり、 時間や対応費用も多くかかってしまうことになりますが、一方では大きい資金を調達するのに役立てられます。

2. 株主割当増資とは

株主割当増資は、既存の株主に対して持ちかけ持分比率に応じ株式を新しく発行する方法のことです。

会社が軌道にのっていれば株主ともいいコミュニケーションを持つことができ、迅速に資金調達をおこなうことができます。

全員に対して新しい株式発行ができれば不平不満も起こらないでしょう。

株主割当増資は確実性が高い方法であると言うことができますが、大きな資金はなかなか調達出来ない難しさがあります。

3. 第三者割当増資とは

第三者割当増資は、第三者に対して新しい株式を発行する方法のことです。

既存株主に対しての持分比率はダウンしてしまうことになりますが、特定の相手に対して積極的に資金調達を持ちかけられます。

第三者割当増資は、短い期間で多く資金を調達したいという場合に有効的に使える方法です。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金をあとから増やすときに注意しなければならない問題点

資本金をあとから増やすとき注意しなければならないポイントがいくかありますので、いくつかを解説します。

持株比率の変化が起こる可能性

増資をおこなうことで、持株比率の低下が起こる可能性があります。

これは会社を経営する方々にとって非常に問題視しなければならないことです。

資本金をあとから増やすことを考えるとき持株比率の予測をして進行していかなければなりません。

持株比率の低下は公募増資と第三者割当増資で起こりうる問題ですが、ここでは第三者割当増資で起こることを事態として解説します。

そもそも持株比率は、自身の株式会社が発行した株式を誰がどの程度保有しているのかを表す数字です。

例えば、自身の会社が1,000株発行したとき、500株をお持ちならば持株比率は50%ということになります。

ではなぜ持株比率の最善の注意を払う必要があるのでしょうか。

一番懸念しなければならない問題には、経営者の支配力が低下してしまう可能性があることです。

例えば1,000株を発行しましたというとき、株式を90%経営者が保有していたとします。

さらに、その会社がもっと飛躍したいということで500株を発行します。

すると経営者の持株比率にはどのような変化が出てきてしまうのでしょうか。

自身の会社が発行している株は1500株となり、自身の持株が900株に留まっているとすれば、持株比率は、60%といいうことになります。

既にここで90%から60%という持株比率の低下の事態が起こっています。

持株比率は、実際に「経営者の生命線」といういい方もすることができます。株式会社では、経営の意思決定は、株主総会に委ねられることになります。

株主総会において持株比率が高いと大事な事項があっても独自の決定へと導くことができるのが株主総会の大きな特徴です。

経営する側は、持株比率が多いほどそれだけ会社を自由に扱うことが出来るということです。

増資してどんどん持株比率の低下の事態が起こってしまうと、意思を主張しても別の株主が賛成してくれるのかいちいち顔色をうかがう必要も出てきてしまうでしょう。

もっとスピーディーに物事を決定したいと思っても、以前のようにはいかなくなってしまうかもしれません。

株主総会では、取締役であったり役員の解任なども決議することができる場所です。持株比率の低下によって、思わぬ事態を招いてしまうこともあらかじめ懸念すべき問題です。

銀行からの借り入れも方法として考える

株式会社が利益を生み出すには、まずお金が必要です。

商品を仕入れもしなければならないので、人材も雇用しなければなりません。そのために資金調達が必要です。

資金調達の方法として銀行からの借入も考えるべき手段のひとつです。昔も今も、最も一般的な資金調達の方法は銀行からの借入です。

借入金を使用して多く投資することで、自己資金に依存することよりも短期で効率よく利益アップを目指していくことができます。

借入金と似たものとして「社債」があります。社債は満期が到達するまで元本に対しての返済の必要はありませんので、より融通の効く使い方をすることができます。

借入金や社債に対して返済することができる利益をしっかり期待することができる状態なら何事に対しても問題はなしです。

業績が低迷している会社が苦肉の策でこのようなことを考えることには注意が必要です。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金をあとからいくら増やすのが妥当か

それぞれの会社では、資本金をいくらにすればいいかということを相当悩んでいるようです。資本金をあとから増やしてどんどん資本金は増えればいいものでしょうか。

ここでまず資本金の妥当な額を考える必要があります。

最初に会社設立時、用意しておかなければならない資本金は、利益がでるまでの運転資金という考えがあります。

ですから1円起業という言葉が一人歩きしていることもありますが、とうてい会社は1円で成り立つものではないという考えも軸に置くべきです。

利益が出るまでの運転資金

資本金は、まず利益が出るまでの運転資金となりうるものです。

会社設立にはいろいろ経費がかかるので、開業してすぐに利益が潤沢に流れ込んでくるわけではありません。

三ヶ月近く利益はゼロということもあり、その間耐える力が必要です。資本金は、耐えるためのお金になりうるものです。

融資を受けるときの額の基準となる

融資も有効的手段というお話しをしましたが、融資がどの程度の額可能なのか判断基準になるものが資本金ということになります。

資本金のことを全然無視して、融資依存というスタイルもNGなのです。

金融機関では、資本金があまりにも少ない会社に融資をしないという事態は頻繁に起きています。

「会社設立したというのに今まで全然貯金もせずサボって来たのでは…?」と思われてしまうかもしれません。

また資本金が少ない会社が融資することができても、おおかた資本金の二倍程度しか借り入れ出来ないという厳しい現実があります。

このケースでは1円起業など自信を持って実行している方々は、融資は2円しか受けることができないということです。

1円起業はそれ程悪いイメージもないのかもしれませんが、2円融資は笑い話です。

許認可に必要な資本金ライン

いろいろ業界には種類がありますが、業界によって許認可を得ないと営業をスタートすることができない場合があります。

許認可あたりが資本金をいくら用意しなければならないか基準値になっていることもあります。

例えば旅行業をスタートしたいと思えば、3,000万円以上の資本金が必要、建設業をスタートしたいと思えば500万円以上の資本金がボーダーです。

ただし資本金の額が多ければいいということではありません。資本金が大きいことで、より多くの税金も支払いしなければならないこともあります。

資本金の相場は

ズバリ、設立時の平均的な資本金額は約300万円といわれています。ここでは総務省・経済産業省の「平成28年経済センサス‐活動調査結果」を利用します。

そこでのリサーチでは資本金が3,000万円未満のパーセンテージは約87.9%、500万円未満のパーセンテージは約41.2%というデータがあります。

ここあたりから見て、平均的な資本金額が300万円前後と言われるのは妥当だと考えることができます。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

まとめ

いかがでしょうか。

今回は資本金をあとから増やす方法、メリット、デメリットについて解説をしました。

増資のいろいろな記事を見ると、融資と比較して融資がデメリット、増資はメリットと

いう扱いをしているものを多くみます。

そうではなく融資にもメリットはありますので、バランスよく使い分けしていくといいでしょう。

増資に対していくらが妥当と判断されるでしょうか。残念ながらそこには回答がありません。増資は、多いほどいいという答えもあります。

ただし増資のデメリットもあるので、メリットとデメリットを総合判断して妥当な額を決定していただきたいと思います。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順
1円起業では不安?資本金をあとから増やす方法について
最新情報をチェックしよう!