【税理士が解説】会社員が会社設立する方法とメリット・デメリット

近年、副業としてのビジネス活動を始める会社員が増えています。その中でも、個人事業主としての活動から会社設立にステップアップすることで、税制上のメリットや信用力の向上など、多くの利点を得ることができます。しかし、会社員が会社を設立する場合には、いくつかの重要なポイントや注意点もあります。

この記事では、会社員が会社設立を検討する際のメリット・デメリット、設立手続きや注意点について詳しく解説します。

会社員が会社を設立する理由には、さまざまなものがあります。中でも、以下の理由がよく挙げられます。

1-1. 副業からのステップアップ

最近の労働市場では、副業を行うことが認められる企業が増えてきており、会社員として働きながら副業を行う人が増えています。副業が軌道に乗り、収益が増えると、個人事業主としての活動を法人化し、税制や事業運営の効率化を図ることができます。

1-2. 税制面でのメリット

会社を設立することで、税金面でのメリットを得ることができます。特に、個人事業主としての収入が大きくなると、所得税の累進課税制度により税負担が増加しますが、法人化することで、法人税率の適用により税負担を軽減できます。また、法人化することで、経費として計上できる範囲が広がり、節税効果が期待できます。

1-3. 信用力の向上

法人化することで、個人事業主よりも取引先や金融機関からの信用が向上します。特に、法人名義で銀行口座を開設したり、融資を受けることが可能になるため、事業の拡大や取引先との契約がスムーズに進むようになります。

会社員が会社を設立する際には、多くのメリットがあります。ここでは、税制面や信用面でのメリットを中心に解説します。

2-1. 税金面での優遇措置

個人事業主と比較して、法人化することで税制上の優遇措置を受けることができます。法人税率は15%~23.2%であり、所得が高い場合でも税負担が一定の範囲内に収まります。一方、個人事業主の場合、所得が増えると最大で45%の所得税が課せられるため、法人化することで大幅な節税効果が期待できます。

また、法人化すると、役員報酬を設定することで、個人の所得税を調整しながら法人税を軽減することができます。

2-1-1. 経費として認められる範囲の拡大

法人化すると、経費として計上できる項目が増えます。例えば、役員報酬や事務所費用、通信費、交通費、業務に関する出張費など、さまざまな費用を法人の経費として計上でき、最終的に法人税額を減らすことが可能です。

2-2. 副業のリスクを軽減

副業を個人で行う場合、リスク管理が難しいことがあります。特に、事業が大きくなり収入が増えると、トラブルや法的リスクも増加します。法人化することで、個人と法人を切り離し、万が一のトラブルが発生しても、法人が負う責任範囲が明確化され、個人財産を守ることができます。

2-3. 社会的信用の向上

法人としての登記が行われると、社会的信用が向上します。これにより、ビジネス上の契約や取引がスムーズに進むだけでなく、金融機関からの融資を受けやすくなります。特に、ビジネスの拡大を考えている場合、法人化することで信用力を高め、大規模な取引を行うことが可能です。

会社を設立することには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。これらを理解しておくことで、会社設立後のリスクを最小限に抑えることができます。

3-1. 設立や維持にかかるコスト

会社を設立する際には、初期費用がかかります。株式会社の場合、登録免許税や定款認証にかかる費用が必要で、最低でも20万円程度の費用が発生します。また、法人を維持するためには毎年の決算や税務申告が必要となり、税理士への報酬や法人住民税などの維持費用が発生します。

3-1-1. 法人住民税の支払い

法人は、たとえ赤字であっても法人住民税の均等割(最低7万円程度)を毎年支払う必要があります。これは、法人として存在している限り発生する固定費用であり、利益が出ない場合でも支払いが発生するため、注意が必要です。

3-2. 経理・税務業務の複雑化

法人化すると、経理業務や税務処理が複雑化します。個人事業主であれば比較的簡単に確定申告を行えますが、法人の場合、毎年の決算報告や法人税の申告が必要となり、そのためには会計ソフトや税理士のサポートが必要になります。これにより、時間やコストが増える点はデメリットとなります。

3-2-1. 税理士への依頼が必要になる

法人化すると、税務申告が複雑になるため、多くの企業が税理士に依頼することを選びます。税理士報酬は会社の規模や業務内容によって異なりますが、年間数十万円程度の費用が発生する場合があります。このような維持費用を考慮しておく必要があります。

3-3. 社会保険の加入義務

法人を設立し、代表者として役員報酬を受け取ると、社会保険への加入義務が生じます。これにより、国民健康保険や国民年金ではなく、健康保険や厚生年金への加入が必要となり、保険料の負担が増えることがあります。

特に、役員報酬が高額になると、社会保険料の負担が大きくなるため、役員報酬の設定には注意が必要です。

会社設立にはいくつかの手続きが必要です。ここでは、会社設立の基本的な流れを紹介します。

4-1. 会社形態の選択

会社を設立する際には、会社形態を選択する必要があります。主な形態として、株式会社合同会社があります。

  • 株式会社:社会的信用度が高く、取引先や金融機関からの信頼を得やすい。設立費用や維持費用が高い。
  • 合同会社:設立費用が安く、運営が簡便だが、信用度が株式会社に劣る。

会社の規模や将来の展開を考慮し、最適な形態を選択しましょう。

4-2. 定款の作成

次に、会社の定款を作成します。定款には、会社の基本情報(商号、所在地、事業目的、役員構成など)が記載されます。定款は会社の運営における基本的なガイドラインとなるため、慎重に作成する必要があります。

4-2-1. 電子定款の利用

定款は紙ベースで作成することもできますが、電子定款を利用すると印紙税(4万円)が不要になるため、費用を抑えることができます。電子定款はPDF形式で作成され、電子署名が付与されます。

4-3. 資本金の払い込み

資本金を設定し、会社名義の銀行口座に資本金を払い込みます。資本金は1円から設定可能ですが、信頼性や事業展開を考慮して現実的な額を設定することが推奨されます。

4-4. 登記申請

定款の作成と資本金の払い込みが完了したら、次に法務局へ登記申請を行います。登記が完了すると、正式に法人が設立されます。

4-5. 税務署や社会保険の手続き

法人設立後は、税務署や市区町村役場への各種届出を行い、社会保険への加入手続きも行います。

会社員が会社を設立する際には、本業とのバランスを考慮しながら、慎重に準備を進めることが大切です。以下に、成功のためのポイントを紹介します。

5-1. 本業とのバランスを取る

会社員としての本業と設立した会社の運営を両立させることは大きなチャレンジです。特に、会社設立後は法人としての手続きや事務処理が増えるため、スケジュール管理をしっかりと行うことが重要です。

5-2. 副業禁止規定の確認

会社によっては、副業禁止規定を設けている場合があります。会社を設立する前に、自分の勤務先が副業を認めているかどうかを確認し、必要であれば上司や人事部門に相談することが大切です。

5-3. 専門家のアドバイスを受ける

会社設立や税務に関する専門家(税理士、弁護士、行政書士など)のアドバイスを受けることで、スムーズな設立と運営が可能になります。特に、税務申告や社会保険手続きは複雑なため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

会社員が会社を設立することは、税制面や信用力の向上といった多くのメリットがありますが、一方で設立費用や運営コスト、経理・税務の複雑さといったデメリットも存在します。法人化を成功させるためには、事前に十分な準備を行い、専門家のアドバイスを受けながら適切な判断をすることが重要です。

本業と副業のバランスを取りながら、会社設立を検討している会社員の皆さんは、この記事を参考に、法人化のメリットを最大限に活かしてビジネスを拡大していきましょう。

ぜひ、経営サポートプラスアルファにご相談ください。

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