事業を始める際に会社設立をしてからスタートする方法がありますが、会社設立は必ずしも行わなければならないものではなく「個人事業主」としてスタートすることもできます。
会社設立することでさまざまなメリットを得られますが、その一方で、金銭的、時間的なコストも個人事業主と比較し、多くなると言われています。
今回は会社設立にかかわる費用、金銭的コストに焦点を当てて解説します。
会社設立費用に見合うだけのメリットを得られるか、それが会社設立の可否にかかわる判断材料になることでしょう。
それでは会社設立費用について解説します。
会社設立費用それぞれの内訳
会社設立にはさまざまな費用が掛かります。
個人事業主の場合は、これらの費用は発生せず、「開業届」を税務署に提出すれば手続きは終了です。
税務署に開業届を提出することに費用は掛かりません。
つまり、個人事業主の場合、「開業費用」は0円になります。
個人事業主と比較し、会社設立すると下記の費用が発生する可能性があります。
定款印紙代
会社設立をする際には、手続きの際に「定款」(ていかん)を添えて提出します。
定款とは、法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規約・基本規則を記載したもので、「会社の憲法」と呼ばれるくらい重要なものになっています。
定款印紙代は、その定款を公的な文書として認め、認証をするための手数料になります。
しかし、昨今の電子化の流れの中で「電子定款」という紙ではない様式で定款を作成した場合、専用のシステムで定款を提出することもあり、その認証料は無料(0円)になっています。
会社設立費用を抑えたい場合、紙の定款ではなく、電子定款を考えるとよいでしょう。
定款認証料
株式会社の定款は、その作成にあたり、公証役場の公証人による認証が必要になります。
公証役場は、公正証書の作成、私文書の認証、確定日付の付与等を行う法務用管轄の役所で、書類に公的な「お墨付き」を与える場所になります。
合同会社の場合、定款の公証人による認証は不要なので、この定款認証代はかかりませんが、株式会社の場合、定款の公証人による認証が必須なので、公証人への手数料として支払いが発生します。
かつては、定款認証代(公証人への手数料)は一律5万円でしたが、政令(公証人手数料令38条)が改正され、2022年1月1日より資本金に応じて手数料が変わりました。
上限は5万円そのままで、資本金が低い会社設立をする際には、手数料が下がりました。
謄本代
会社設立をする際には、公証人が定款の謄本(特別な用紙に印刷し綴ったもの)を作成しますが、その手数料は、謄本1枚につき250円で、大体8枚になるので、250万円×8=2,000円 になります。
合同会社の場合、公証人による定款認証というステップがないので、公証人作成の謄本綴りもなく、謄本代は0円になります。
登録免許税
法務局に会社設立登記をする際の手数料とお考え下さい。
法律で手数料額が決まっていて
合同会社 | 最低6万円が必要 資本金の1,000分の7(0.7%)の金額が6万円を上回る場合、その金額が必要 |
株式会社 | 最低15万円が必要 資本金の1,000分の7(0.7%)の金額が15万円を上回る場合、その金額が必要 |
を印紙で支払います。
つまり、合同会社の場合
C=(資本金)×0.7%>6万円/C>857.1万
資本金が868万円より高くなる場合、登録免許税は6万円を超えます。
同様に、株式会社の場合
C=(資本金)×0.7%>15万円/C>2142.8万
資本金が2143万円より高くなる場合、登録免許税は15万円を超えます。
合同会社で資本金900万円や株式会社において資本金2500万円などで会社設立するケースは少ないので、多くの会社の登録免許税は合同会社6万円、株式会社15万円と見積もってよいでしょう。
資本金
会社ですので当然資本金が必要になります。
かつては300万円以上の資本金が必要だった時代もありますが、2006年の「新会社法」施行により、資本金1円の「1円会社」の設立が可能になり、実質的な資本金要件はなくなりました。
ただし、1円会社の周囲からの評価や金融機関の査定、実際の会社経営などでプラス評価になることは少なく、ある程度の資本金は必要だと考えます。
その他の費用
法定費用として絶対に発生する費用は以上になりますが、実際にはそれ以外にも「社印の作成」や「印鑑証明代」がかかります。
会社設立登記の際には社印も登録が必要です。
どこか廃業した会社の社印を使いまわすなら別ですが、そんな会社はないはずで、作成費用として20,000円前後かかります。
代表者印「●●株式会社代表取締役▲▲」も作っておいた方がいいでしょう。
また、発起人個人の「印鑑証明書」も必要になります。
印鑑証明書自体は、300円ほどで自治体窓口で発行してくれますが、それまでに自治体へ自分の実印を登録する必要があります。
実際に会社設立にかかる費用は?
以上、会社設立に必要な費用を表にまとめてみました。
|
合同会社 |
株式会社 |
会社設立にかかる費用(法定費用) |
||
定款印紙代 |
紙の定款:4万円 |
紙の定款:4万円 |
定款認証代
|
0円 |
①「資本金の額等」(後記*参照)が100万円未満の場合、「3万円」 |
謄本代 |
なし |
2,000円(250円×8枚) |
登録免許税 |
最低6万円 |
最低15万円 |
資本金 |
最低1円 |
最低1円 |
|
|
|
合計 |
最低6万円+資本金 |
最低18万2千円+資本金 |
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|
|
会社設立にかかる費用(その他費用) |
||
社印作成費用 |
約2万円 |
約2万円 |
発起人の印鑑証明書 |
1人につき約300円 |
1人につき約300円 |
費用面だけを考えると、株式会社よりも合同会社の方が明らかに安くなります。
もちろん、合同会社と株式会社では、同じ法人でもできることや手続きの流れが異なるので、費用面だけで合同会社に決めず、熟慮が必要です。
株式会社と合同会社で会社設立費用が違う理由
そもそも株式会社と合同会社でこれだけ(倍以上)会社設立費用が異なるのは、合同会社が「新会社法」の施行によって「有限会社」が廃止され、新しく設けられた会社形態で、有限会社の後継的位置づけもあるからです。
もともと有限会社は家族経営など小規模な会社のために、意思決定が迅速にできるなどメリットがある一方で、大会社にはしにくい会社形態でした。
合同会社も同様に、株式会社ほど全国規模の大会社になることについて、あまり前提としていない会社形態です(全国規模の合同会社はありますが)。
合同会社の出資者と経営者は同じため、株式会社のように株主総会や取締役会がなく、「小回り」重視になっています。
そうした会社形態の違いから、特に定款認証の部分で差があり、より株式会社の方が、公的な「お墨付き」を求めるため、会社設立費用が高めになっています。
合同会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
代表者の名称 | 『代表社員』 | 『代表取締役』 |
資本金 | 1円以上 | 1円以上 |
出資者と経営者 | 同じ | 異なる |
重要事項の決定 | 社員全員の同意 | 株主総会の議決 |
意思決定方法 | 社員の過半数の同意が必要(経営者は『社員』) | 取締役の議決(経営者は『取締役』) |
最高意思決定機関 | 社員総会 | 株主総会 |
業務執行者 | 業務執行社員あるいは社員全員 | 取締役 |
責任の範囲 | 有限責任 | 有限責任 |
役員の任期 | なし | 2年ごとに更新(最大10年) |
定款の認証 | 必要なし | 必要 |
決算公告 | 不要 | 毎年必要 |
出資者への利益分配 | 社員間の合意で自由に配分 | 株式の保保有割合に応じて配分 |
株式の譲渡 | 社員全員の同意が必要 | 自由 |
社会的な認知度 | 低い | 高い |
株式の公開 | できない(「株主」がいない) | できる |
会社設立費用を低く抑える方法は?
これまでの説明で、会社設立費用を抑えるには
- 株式会社よりも合同会社
- 紙の定款ではなく電子定款
の方がよさそうですが、落とし穴があります。
特に2番目の電子申請については、コストがかかります。
- マイナンバーカード
- PDF変換ソフトAdobe Acrobat 約35,000円
- ICカードリーダライタ(マイナンバーカードを読み込むためのもの) 約3,000円
マイナンバーカードの発行は無料ですが、②と③で4万円弱。
①からそろえると全然節約できません。
しかも、わかりづらい「法務省の登記・供託オンライン申請システム」の使い方をマスターする必要があります。
これを憶えるコストだけでも、かなりかかります。
つまり、見かけ上電子申請の方が安いのですが、必要な機材や申請方法をマスターするコストを考えると、従来の方法の方がコスパはいいという逆転現象になってしまいます。
会社設立を考えている人が、わざわざ電子申請をするメリットは薄く、費用面で安いことを生かすためには、職業として電子申請を行っている司法書士、弁護士等専門家に依頼する時くらいです。
4万円(電子申請で浮く設立費用)>専門家に電子申請を依頼する手数料
ならば電子申請をした方が、会社設立費用は安くできます。
ただし、司法書士等なら誰でも4万円以下でやってくれるということはなく、電子申請を有効活用し、費用を抑えられるのは、会社設立をメインとしているコンサルティング会社や税理士法人(司法書士は「提携」していることが多い)に会社設立代行を依頼するケースなどになります。
会社設立費用だけでは考えられない!?それ以外の会社設立と個人事業主のメリット、デメリットも押さえておこう
会社設立費用だけで考えるのはもちろんよくないです。
数万円、10数万円節約したばかりに、将来的に重要な判断ができなくなる可能性もあるからです。
株式会社ならば広く、株式を発行して出資を募れます。
いざという時には、株式会社の方が資金調達でき、それによって事業拡張できる可能性もあるからです。
会社設立費用面だけを考えず、将来の事業計画等も総合的に考えて会社設立をお願いします。
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合同会社 |
株式会社 |
メリット |
設立費用が安い |
社会的信用がある |
決まった役員で長期間経営が可能 |
上場ができる |
|
株主総会等の必要がない。迅速な機関決定が可能 |
株式を発行して資金調達ができる |
|
株主による意図的、敵対的な介入を防げる |
融資を受けやすい |
|
経営の自由度が高い |
|
|
デメリット |
社会的信用がない |
役員任期がある |
仲間割れすると経営が止まる |
決算公告の義務がある |
|
上場できない |
悪意を持った株主の影響男排除できない |
|
株式発行による増資ができない |
設立費用が高い |
会社設立費用を低く、かつ将来性ある形で行うためには「経営サポートプラスアルファ」に相談を!
見かけ上、合同会社の方が株式会社よりも会社設立費用は安くなりますが、みなさんの将来の事業計画によっては、株式会社の方がいいケースもあります。
「損して得取れ」ではありませんが、(合同会社設立による)10万円超の節約が果たして正しいのか、ぜひ専門家の意見も聞いてください。
「経営サポートプラスアルファ」には会社設立に詳しいプロフェッショナルが揃っています。
合同会社か株式会社かの選択のほか、そもそも会社設立すべきなのか、場合によっては個人事業主としての開業の方がいいケースもあり、それらについてもアドバイスさせていただきます。
「経営サポートプラスアルファ」が提携している司法書士は、電子定款の作成も可能ですので費用を抑えることが可能です。
もちろん、当社の税理士が、開業にかかわる総合的なコンサルティングや資本金の相談、開業後の税務、会計等についても的確にサポートさせていただきます。
土日祝日夜間も対応します。
また、遠隔地にお住まいの方は、LINEやZOOM、チャットワークなどでも対応できますのでご安心ください。
会社設立はみなさんの事業にかかわる重大な決断になります。
費用を抑えつつも、的確な形で果たされることを希望します。
なんでも当社にご相談ください。