副業をしている会社員の方は、どのように節税を行うことができるのか考えている人もいるでしょう。
副業で収入が上がってくるのは嬉しいことですが、税金の支払い金額も大きくなるため、節税をしないと損をすることになります。
節税方法にもいろいろありますが、会社設立を考えているなら妻を社長にすることもできます。
「妻を社長にすることで節税が可能なの?」と疑問を感じる人もいるでしょう。
妻を社長にすることの節税について紹介しましょう。
妻を社長にすることで節税できる理由とは?
副業を行っている会社員の方は収入が上がった際に、妻を社長にすることで節税を行うことも検討できます。
妻を社長にすると、なぜ節税することができるのか知っておくことで前向きに考えることができるでしょう。
理由は以下の内容となっています。
所得分散による節税効果
副業で会社設立をして妻を社長にするなら、所得分散により節税を行うことが可能です。
税金の支払いは自分の所得に応じて決定するので収入が増えるほど税金の支払いも上がります。
例えば、自分の本業の給与が年間で900万円あり、副業で600万円の収入があるなら課税所得は1,500万円になります。
細かい部分を除き、単純に税金の支払いを計算するなら1,500万から仮定で200万円の所得控除を引き、所得税と住民税の計算を行うなら大体300万円ほどを税金として支払わなければいけません。
もし、個人事業主なら税率がさらに上がるため、税金の支払い金額は300万円以上となり、収入の多くが税金の支払いで消えてしまいます。
ただ、妻を社長にして自分の年収が900万円、妻が600万円の収入となり、所得控除などを考慮すると自分は約135万円、妻は45万円の税金の支払いとなり合計で約180万円となります。
自分1人の収入だと所得税は300万円で妻を社長にするなら180万円ほどなので、120万円ほども税金をカットできるのは大きな節税となるでしょう。
社長を妻にした方が所得を分散することができるので、節税の効果を得られることを覚えておきましょう。
妻の役員報酬で会社の経費を落とせる
妻を社長にするなら給与を得ることができます。
社長の場合は役員報酬となりますが、これは会社の経費で落とすことができるので、会社の収益を減らすことが可能です。
会社の収益には法人税が課され、収益が大きいと最大で23.2%もの税率がかかります。
副業なら個人のみで会社経営をしていることが多く、自分を社長にして役員報酬による経費計上することは可能です。
ただ、妻を社長にして自分は別のポストに付けば役員報酬を2倍にして落とすことができるので、より節税の効果を得ることができます。
妻を社長にして役員報酬を1ヶ月に1回得るようにしておけば、毎月の経費を計算でき、別の手続きが必要ですが年に2〜3回ほどボーナスなども妻に与えて、さらに経費計上させることも可能です。
このようなメリットがあるので妻を社長にすることを考えてみましょう。
妻が社会保険に加入することができる
妻を社長にすると個人で社会保険に加入することが可能です。
専業主婦として活動しているなら、通常は夫の社会保険や扶養家族に入ることで保険や年金を得ることができます。
ただ、妻が社長になれば会社役員となるため、個人で社会保険に加入することが必須となります。
社会保険に加入するなら妻がもらう給与から社会保険の金額が差し引かれることになるため、個人としては労使折半、会社としては福利厚生費として経費に計上することが可能です。
つまり、妻を社長にすれば社会保険料の支払いから節税を行うことができ、課税所得を減額できます。
さらに、妻が社会保険料に加入するようになれば国民基礎年金に加えて役員報酬の金額で報酬分が上乗せられます。
専業主婦として夫の扶養や社会保険に加入しているよりも老後の年金が高くなるのでメリットがあります。
ただ、妻を社長にして社会保険に加入させるには必ず役員報酬を設定する必要があり、0のままなら条件に当てはまらないので注意が必要です。
また、単に名目上の役員で権限が無かったり実質的に勤務実態が無い状態であれば被保険者とみなされないので、妻に社長の仕事を与えておくことも大事です。
条件を確認して社会保険への加入を行えるようにしましょう。
妻に退職金を与えることができる
妻を社長にすれば退職金を与えることも可能です。
妻を従業員にしても退職金を受け取ることは可能ですが、社長の役員としての立場であれば法人税において損金を認められるので、退職金を大きくすることが可能です。
退職金が支給される目安金額は「最終報酬月額×勤続年数×功績倍率」とされています。
例えば、最終報酬月額を50万円で金属年数が20年、功績倍率が2.0倍であるなら、50×20×2.0で2,000万円ほどの退職金を受け取ることが可能です。
退職金として、報酬金額や勤務年数が長いなら、さらに退職金を増やすことができ、収入を増やすことが可能です。
また、社長の妻に与えた退職金は税法上損金として計算できるので、会社の課税所得を大幅に減らすことが可能です。
また退職所得控除という制度の利用も行うことで「退職所得控除後に1/2の課税」をされることや「分離課税」として他の所得と分けて課税されるため、より税金の支払いを減額させることも期待できます。
妻を従業員として雇うのも良いですが、社長などの役員のポジションにしておいた方が、節税効果が高いので覚えておきましょう。
不動産を共有名義にすることができる
妻を社長にすることで、自宅不動産を共有名義にして節税を行うことも可能です。
不動産は居住用の不動産の特例という制度があり、3,000万円までは特別控除として税金の支払いをしなくて済みます。
副業で不動産投資を行っているなら節税として妻と共有名義にすることで、節税を考えることも可能です。
ただ、妻に収入がないなら不動産を共有名義にするときに税金がかかってしまいます。
妻に収入がない状態で共有名義を行うと、税金の仕組みでは社長から妻への贈与と認定されるため、多額の贈与税を支払わなくてはいけません。
しかし、妻を社長にして収入がある状態なら、収入の割合に応じて共有の特分登記を行えるので、税金の支払いを抑えることができます。
もし、不動産を複数持っているなら、節税対策をしないと固定資産税などもあるため、税金の支払いが大きくなっていきます。
少しでも節税できるようにするため妻を社長にして分散できるようにしておきましょう。
妻を社長にして節税を考えるときの注意点
自分が本業と副業の両方で仕事をしているなら、妻を社長にして節税を考えることは良い方法です。
ただ、妻を社長にするときは注意点もあるため、しっかりポイントを明記しておく必要があるでしょう。
妻を社長にするときは以下の点を考えてみてください。
妻を社長にするときは専業主婦であること
妻を社長にして節税をしたい場合は専業主婦であることが大事です。
妻を社長にするのは自分が本業で収入を得ており、副業でも社長として収入を増やすと所得の割合が大きくなるためです。
所得が増えることで支払う税金も大きくなるため、専業主婦である妻を社長にするなら収入がない分、所得の分散を行うことができます。
ただ、共働きで妻も本業の仕事をしている場合は一定の収入を得ていることになります。
共働きで収入が確保できている中で、自分の副業の社長に妻を置いても収入は大きくなり、所得分散の効果をあまり得られないでしょう。
妻と自分の収入がさほど変わらない場合は、自分と妻どちらが社長になっても税金の支払いはあまり変わらないはずです。
そのため、所得分散の節税効果を狙うなら妻が収入を得ていないこと、またはパートなどで低い所得に抑えられていることがポイントです。
今ではネットなどで簡単に仕事も行えるため、妻に仕事をしているのか確認を取ってから妻を社長にするようにしましょう。
役員報酬は年に1回しか変更することができない
妻を社長にするなら役員報酬により報酬を与えることができ、金額分を経費として計上することが可能です。
ただ、妻を社長にして役員報酬を設定した場合は毎月しっかり支払わなければいけません。
会社の経営が良いときは問題に思わなくても経営が悪化したときは、役員報酬を払う金額さえも厳しい場合があるでしょう。
会社の経営が悪化したときは「役員報酬を変更すれば良い」と考えるかもしれません。
ただ、役員報酬の変更は年に1回のみとなるため、月単位で変更させることはできません。
会社の運営状況によって妻の役員報酬額を変えることができないので、会社の経営状況が急に悪化しても、社長の妻への役員報酬は引き続き支払う必要があります。
役員報酬の支払いができない場合も社長が会社に貸すという形で経理上は処理することができますが、最初の設定によって負担が大きくのしかかってくることも考えておくことが大事です。
妻を社長にするのは節税としてメリットもありますが、デメリットになることもあるため金額設定はしっかり考えましょう。
法人口座の開設を行う
妻を社長にするなら法人口座の開設を行っておくことが大事です。
会社運営を行うなら法人口座を開設しておかないと経営の資金を上手にやりくりすることができません。
会社運営を行う場合、取引先への支払いや報酬の振込み、また運営に関わる諸々の経費は全て専用の口座から行うと資金の流れを把握しやすくなります。
別の銀行口座と共有して会社の経費を支払うなら、プライベートと混ざってしまってしまうため、会社の決算書などを作成するときに混乱してしまうことになるでしょう。
そのため、社長を誰にするのかに関わらず法人口座の開設をしておくことは必須です。
また、法人口座の開設は金融機関の審査を通過する必要があり、会社を設立したから開設できるわけではありません。
事業内容や資本金、また会社の代表者も厳しくチェックされます。
妻を社長にしていると代表者の部分で金融機関が不安に感じることもあるため、自分との関係性や事業に関わる詳細な点などをしっかり説明することが大事です。
大手の金融機関だと新規法人口座の開設は断られるリスクも高いので、妻を社長にしても口座開設できるところを見極めて選ぶようにしましょう。
扶養を外さなくてはいけないこともある
妻を社長にするなら扶養家族から外さなくてはいけない場合があります。
会社に勤務しているなら配偶者を扶養家族に加入することができ、税金の支払いで配偶者控除を受けることができます。
配偶者控除は税金や保険の支払いでメリットがあるため、扶養家族に入っていることで節税を行うことが可能です。
ただ、扶養家族は対象の方の収入が年間103万以下であれば加入できるものであり、金額を超えると外れてしまいます。
103万円を超えても130万円以下に抑えれば会社員の夫の社会保険に加入することができるので、保険料の支払いは節約することが可能です。
ただ、130万円も超えてしまうと所得に応じて課税されるようになるため、手取りの収入は少なくなってしまいます。
妻が会社の社長になるなら、年間の収入は副業の業績によって変わりますが、高い確率で外さなくてはならないでしょう。
そうなると、扶養で受けていたメリットが無くなるため、妻の課税についても真剣に考える必要があります。
会社の社長になれば社会保険に加入できるようになるとはいえ、収入に関しては計算しておく必要があるでしょう。
<関連記事>
妻を社長にして節税する際のまとめ
副業で会社設立を行ったときに、妻を社長にして節税することを検討できます。
ただ、妻を社長にする際は税金の仕組みはもちろん、制度の条件などをしっかり考慮しておかないと、うまく節税できないこともあります。
妻を社長にする際は会社の状況と妻の状況の両方をしっかり確認しておく必要があるので、慌てずに慎重に行うようにしてください。