定款(ていかん)とは、一般に法人の組織や運営に関する根本的な規則またはこれを記載した書面もしくは電磁的記録したものを言い、その法人の憲法に当たるものです。
補助金や助成金の申請だけでなく、行政への許認可や金融機関での口座開設、事業承継でも必要になります。
では、そもそも定款とはどんなものでしょうか?
しっかり確認しておかなければ、事業承継などで困惑しているケースもあるようです。
今回は、会社設立に際して必ず作成される定款の意味や目的・内容について詳しく紹介します。
定款の意味と目的について
会社の定款とは、会社の組織・運営に関する根本的な規則またはこれを記載した書面もしくは電磁的に記録したものであり、その会社の憲法に当たるものです。
株式会社の定款には、公証人の認証を受けなければ効力が生じません。
認証とは後日の紛争を防止するため内容を明確にする手続きであり、公証人による認証を経なければ定款が無効となって、株式会社設立登記を申請することができせん。
株式会社の定款は、発起人全員で作成、署名または記名押印のうえ公証役場で認証を受けなければなりません(会社法26・30条)。
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(会社法49条)ことから、有効な定款がなければ株式会社を設立することができないことになります。
これが本質的に重要な定款の意味と目的です。
ちなみに公証役場で定款の認証を受けるには、以下の用意が必要となります。
- 作成した定款3部
- 発起人の印鑑証明
- 発起人の実印
- 収入印紙(4万円)
- 認証手数料(5万円)
合同会社の定款には公証人の認証は不要
合同会社は株式会社と異なり、出資者となる各社員がそれぞれ会社を所有する権利を持ちそれぞれが経営に参画するため、会社の所有と経営が分離することはありません。
また定款を変更するにも全社員の同意が必要になりますので、トラブル発生の可能性が少ないことから定款を認証する必要はなく省略されるのです。
定款の記載事項の種類
定款には会社の商号・目的・取締役など役員の任期・株式発行に関わる時効など、会社にとって非常に重要な事項が記載されます。
事業承継をするには定款に記載されたルールに従いますし、会社を譲り受けた者も定款の記載に従わなければなりません。
定款の記載事項には、必ず定めなければならない絶対的記載事項のみならず、定款でなければ有効にならない相対的記載事項、定めても定めなくてもよい任意的記載事項の3種類があります。
絶対的記載事項
①目的
定款に記載する「目的」とは、会社が行う「事業の内容」です。
レストランを営業する会社なら「飲食業」、パンなどを作って売っているなら「パンの製造販売」になります。
会社は、定款で「目的」として記載している範囲内でのみ活動することができ、「目的」に記載していないことは法律上できません。
会社を設立する場合は、当面行わない事業であっても、将来を見据えて3~10個程度入れておきます。
②商号
会社の名称を記載します。
③本店の所在地
最少行政区画である市町村、東京都の場合は区まで記載すれば良いのです。
もちろん番地まで記載してもかまいませんが、この場合は社屋が引っ越した場合に定款の変更が必要となります。
④設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
会社設立にあたって、出資される額の最低額を決めなければなりませんがこの具体的な額については会社法上の制限はありませんので、最低額「〇〇円以上」としても出資額「〇〇円」としてもかまいません。
⑤発起人の氏名または名称及び住所
発起人は、個人でも法人でもなることができます。
法人の場合は、名称および住所を記載します。
⑥発行可能株式総数
会社から今後を含めて発行することができる株式の総数を「発行可能株式総数」といいます。
公証人の認証を受ける時点では定めていなくてもよいのですが、少なくとも株式会社設立登記の時までに定めておかなければなりません。
すなわち「発行可能株式総数」について定款に定めていない場合は、株式会社の成立の時までに、発起人全員の同意によって、定款を変更して発行課の株式総数の定めを設けなければなりません。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、絶対的記載事項のように記載なければ定款自体が無効になるのではないが、その事項は定款に定めておかなければ、その効力を否定されてしまうものです。
相対的記載事項には次のものがあります。
- 現物出資
- 財産引受
- 発起人の報酬
- 設立費用(変態記載事項)
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 株主総会の招集通知を出す期間の短縮
- 役員の任期の伸長
- 株券発行の定め
変態記載事項
変態記載事項は、発起人等がその権限を濫用して会社に不利益を与える危険性が高いものとされ、したがって定款に記載して裁判所の選任した「検査役」の調査を受けなければならないと規定されています(会社法33条)。
なお検査役の調査は500万円を超える場合のみ対象となります。
①現物出資
発起人が出資する場合は、金銭以外の出資が認められています。
例えば設立後の会社が事業用として使う土地を「発起人が提供」する場合などです。
これを「現物出資」といいますが、金銭による出資と違いこのような財産については評価の問題が生じます。
もし価値のない土地を過大に評価すればその分会社の財産的基礎が弱まりますし、土地を提供して株式を受取る発起人と、他の出資者との間にも不平等が生じます。
そこで会社法では現物出資がある場合は必ず定款に記載し、検査役の調査が義務付けられているのです。
②財産引受
「財産引受」とは、発起人が、会社の成立を条件に会社のために、第三者との間である財産を譲り受ける契約を締結することです。
例えば、設立後の会社が使うビルを、第三者から取得する契約などです。
このビルはもちろん発起人が取得するわけではなく、設立後の会社が所有権を取得することになります。
この場合も現物出資と同様の理由で必ず定款に記載し、検査役の調査を義務付けられています。
③発起人の報酬
発起人は設立後の会社から報酬を受けますが、自ら報酬を任意に決めると不当なことになるため、定款に記載することにしています。
④設立費用
会社設立のために発起人が費用を使った場合、その費用を設立後の会社に請求します。
その際会社に過大な請求をすることがあれば、会社の財産的基盤が損なわれますので「設立費用」も定款に記載させて検査役の調査を受けることとされています。
その他の相対的記載事項
株式の譲渡制限度・株主総会招集通知期間短縮・役員の任期伸長・株券発行に関する規定などがあり、これらを決定したときは定款に記載しなければ効力が生じません。
任意的記載事項
任意的記載事項とは定款に記載するかしないかについて会社の任意とされている事項です。
定款に記載しなくてもその効力は認められるのですが、定款に記載することで定款変更の手続きを取らない限り変更できないというメリットが生じます。
任意的記載事項には制限はなく、取締役の権限、監査役の員数、事業年度、定時株主総会招集比など何でも定められます。
電子定款について 電子定款の業務は行政書士の業務です
定款には電子定款があります。
インターネットの普及に伴い、2004年にPDF化された電子媒体によって定款の送信をインターネットによって認証を受けることができることになりました。
この電子媒体によって作成された定款を電子定款といいます。
電子定款の作成を行政書士に依頼しても4万円の印紙税に比べて安くなりますので、お近くの行政書士事務所を検索してみましょう。
定款は「公証人の認証」によって効力が生ずる
公証人の認証を受けた定款は会社成立の前は、以下のケース以外では変更できません。
- 現物出資などの変態記載事項についての検査役の調査により、裁判所が不当と認め、変更したとき
- 上記の変更事項について発起人全員により、定めを廃止するとき
- 発行可能株式総数が定款に定められていないとき
- 発行可能株式総数を、発起人全員の同意で変更するとき
- 発行可能株式総数は原始定款には記載していなくてもよいのですが、登記事項であるため株式会社設立登記の時には定めていなければ、設立登記をすることができず、株式会社は成立しません。
- 発起人は、定款を「発起人が定めた場所」に備え置かなければならず、(株式会社の成立後は、その「本店」及び「支店」に備え置かなければなりません。)
- 発起人(会社成立後は株主、債権者)は、発起人が定めた時間(会社成立後は、その営業時間)であれば以下の内容を行うことができます。
- 定款の書面の閲覧(定款の電磁的記録の閲覧)
- 定款の書面の謄本・抄本の交付請求(定款の電磁的記録の書面での交付請求)
まとめ
株式会社の定款は、発起人全員で作成、署名または記名押印のうえ公証役場で認証を受けなければなりません(会社法26・30条)。
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(会社法49条)ことから、有効な定款がなければ株式会社を設立することができないことになります。
これが定款の本質的な意味及び目的であります。
ちなみに定款の作成をはじめ、会社設立に関してお悩みの方は、経営サポートプラスアルファへご相談ください。